第10章 不測の事態
万理の言葉通り、みんなで画面を眺めていると、次第に流れていくコメントが減っていき、やがてサーバー調整中という文字が浮かび上がって停止した。
万「ここだけを差し止めても他に出回ってしまったら元も子も無いから、俺が知る限りの他のネットワーク会社にも通達は入れました。だから、今後はネット上に愛聖の電話番号が掲載されてしまう事はないでしょう」
さすが万理くん!と社長が再度言った後、社長は簡単に身なりを整える素振りを見せて次は僕が頑張る番だね···と前を向く。
小「さて。ネット上の事は万理くんが頑張ってくれたからひとまず安心だ。でも、根本的な部分を見逃してしまったら終わりは見えない」
万「そうですね。愛聖の個人情報を誰がリークしたのか、そこまで突き止めないと」
小「愛聖さんに、心当たりはあるかい?」
『いえ···』
もし、心当たりなんてあれば···少なからず自分から問いただしているだろうから。
小「さっきの電話で、八乙女も力を貸してくれるって言ってたよ。弱小なウチの会社だけの働きじゃ宛になどならない!とかね」
万「なかなか手厳しいお言葉ですね···」
小「聞こえようによってはそうかも知れないけど、それは八乙女なりに心配してくれてるんだよ。愛聖さんを八乙女の所から連れて来た以上、僕は全力で守らなきゃいけないから」
『私は···最初からずっと、社長にご迷惑ばかりおかけしているのに、ですか?』
小鳥遊社長との出会いは、あの日、万理の部屋でだった。
いろんな事情を抱えて先が見えない状態だった私を、ここまで引き上げてくれた。
これまでだって、たいして稼げない私を何ひとつ不自由させない環境で置いてくれているのに、それなのにまた···
小「僕や八乙女の仕事って言うのはね、ただ会社のテッペンで威張ってるのが仕事じゃないんだよ。アイドリッシュセブンや愛聖さん、もちろん万理くんも含めてだけど、みんなの顔と名前から始まる全て自分の何を切り捨ててでも守るのが最優先の仕事だよ?もちろん僕は、それを仕事だと思ってはないけど」
社長は続けて、自分の会社にいる全員が家族だから、守るのは当然の事だと言った。
小「だから、キミが分かる限りの事を全部話してくれたら、僕は嬉しいんだけどね?」
私が分かる限りの、事···