第10章 不測の事態
三「そうじゃねぇけど···まぁ、似たようなもんか?訳は後で話すから頼む。ほら愛聖、一織と一緒なら平気だろ?飯は壮五がいるから出して貰え?な?分かったか?」
三月さんに頷きながら、迎えに来た一織さんと一緒にリビングへと歩き出す。
その後ろで、三月さんが自分のスマホから万理に電話をかけていた。
いつもの場所に腰を下ろしても落ち着かず、三月さんが言ってたように逢坂さんが配膳をしてくれても手をつける気にならない。
三「愛聖、万理さんが今から来るって」
通話を終えた三月さんが顔を出し、それを見た二階堂さんが事情を話せと三月さんに声をかける。
三「オレもいまさっき愛聖に聞いたからなんとも言えないけど、明け方から知らねぇ番号のオンパレードらしい」
陸「知らない番号って···相手が誰だか分からないってこと?」
マグカップに口を付けかけた七瀬さんに小さく頷けば、その場の空気が重くなった。
『最初は仕事の電話かな?···って思って、出たんです』
環「そんな時間にか?」
一「この仕事は特に、何時から何時までなら電話してもいいというルールはないんでしょう。24時間、どこかで誰かが仕事をしているんですから。それでもモラルがある人なら、時間は考えるんでしょうけど」
そう言った一織さんが、続きをどうぞ?と私を見る。
『それで、電話に出たら···変なテンションで、繋がった!とか、小鳥遊プロダクションの佐伯 愛聖か?ホンモノか?とか聞かれて、私よく分からないまま、そうだと答えたんです。そしたら、着信に残ってる番号を登録してって言われて、またかけるからって言ったあとに通話が切れて』
その後も、着信が止まればまたすぐ違う番号からかかって来て今に至る···という事を話した。
壮「イタズラにしては、随分と悪趣味だね」
大「イタズラってより、この場合は嫌がらせって言う方が近いんじゃないか?」
嫌がらせ···?
でも、なんの為に?
一「佐伯さん。単刀直入に言いますが、あなたは誰かに恨まれているということは?」
恨みというワードにピクリと肩を震わせた私を見て、隣に座るナギさんがそっと肩に手を乗せる。
ナ「イオリ···そんな怯えるようなことは言ってはダメですよ」