第10章 不測の事態
明け方からずっと鳴り止まない電話に困惑する。
それは知らない番号ばかりの着信で、最初の何回かは仕事の電話かも?って思って通話ボタンを押した。
でもその相手は、全然知らない人ばかりで。
さっきだって···
『はい···佐伯です···』
ー うわっ!マジで繋がっちゃった?!マジで小鳥遊プロダクションの佐伯 愛聖ちゃん?!ね、ホンモノ?! ー
『はい、まぁ···佐伯 愛聖は私ですけど···』
ー スゲー···あ、着信にこっちの番号出てるっしょ?それ登録してよ?またかけるから! ー
そう言って向こうからプツリと通話が切れた。
なんだったんだろう?とか、そんなことを悠長に考えてる場合じゃないよね。
どこからか、私の直電の番号が漏れてる。
かけてきた相手が知らない人ばかりだと言うことが、そういう結論に至らせた。
いったいどこから?
どうやって?
それすら分からない事態に、また鳴り出したスマホをクッションの下に押し込めながらどうしたらいいんだろうと頭の中が真っ白になる。
···怖い。
私が知らない相手からばかりの着信。
もしかしたら、本当に仕事に関係する電話も中にはあるかも知れないけど、それでも今は電話に出ることが怖くて仕方ない。
三「おーい、愛聖起きてっか?朝飯とっくに出来てんぞ?」
ドアの外から三月さんの声が聞こえて、慌ててドアを開けて顔を見せた。
三「おー、起きてたんなら···お前、どうした?顔色悪すぎだろ···」
『三月さん···あの···』
私の顔をひと目見て言う三月さんに、実は···と明け方からの事情を軽く話す。
三「はぁっ?!知らないヤツから電話が?!それってダメなヤツだろ!···とりあえずオレが万理さんに連絡してやっから、愛聖はスマホ持ってリビング行っとけ。みんながいる場所なら安心だろ?な?」
三月さんにそう声を掛けられながら、クッションの下に押し込んだスマホを手に取る。
それはまた知らない番号からの着信を表示して、いつまでも鳴り響いていた。
三「大丈夫、ここにはオレらみんながいるから怖がらなくていいよ。あ、一織ちょうどいい所に!ちょっと愛聖をそっちに連れてってやってくれ」
一「なにかあったんですか?体調不良でも?」