第10章 不測の事態
「キスをされてるのは愛聖さんなのに万理くんが照れるの?」
万「そうですよ、だってこんな事サラッと出来るのって大人に染まり切った俺たちには難しいですから」
万理くんに言われて、改めて···そうだねと言って頷く。
このスチールから爽やかさを感じてしまうあたり、壮五くんと環くん、それから愛聖さんがピュアな気持ちでいるからだろう。
そう言えば、Re:valeの2人だったら?
打ち合わせなんかでRe:valeと会う度に、愛聖さんは可愛がられているけど。
百くんにギューっとハグされても、千くんに抱き寄せられても。
それも特にイヤらしさなんて感じない。
彼らは大人組ではあるけど、ピュアな気持ちでいるってことなんだろうか。
もしそうじゃなかったりしたら、いわゆる···アレかな?
お父さんは許しません!みたいな?
紡くんとほとんど変わらない年頃のお嬢さんなんだから、そういう所も気をつけてあげないといけないな。
きっと僕より、八乙女の方がギラギラと目を光らせているだろうけども。
なんて、これは八乙女と僕が約束した秘密だから、誰にも言わないけど。
八乙女は···本当にそれでいいんだろうか。
自分が本当の父親だと、言わないままで···いいんだろうか。
打ち明けてしまえば、きっと今よりもずっといい関係になれるんじゃないかと思ったりもするが···
八乙女が決めたことだから、深くは意見なんて言えないけど。
万「社長?なんだか難しい顔をしてますけど、どうかしましたか?」
ひょこっと僕を覗く万理くんに笑い返し、なんでもないよとパソコンの画面に視線を移す。
これだけ素敵なショットが撮れてるんだから、お蔵入りするのは勿体ないな。
監督にお礼の電話をするついでに、ひとつ提案してみようか。
上手く交渉出来たら、お互いにいい結論へと向かうだろうから。
クライアント側は、新商品の販促として使って貰う。
こちら側は、MEZZO"を売り出すひとつのいい案件へと繋げられる。
こういった交渉は得意ではないけど、八乙女ならきっと、使えるものは使え!って言うだろうから。
そう考えながら、打ち合わせの時に教えられた監督の連絡先を取り出し、電話をかけた。