第10章 不測の事態
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
「おや?」
先日の愛聖さんのCMが仕上がったからと、撮影スタッフから映像を落としたディスクが届けられ、ひとり社長室でパソコンを立ち上げた。
打ち合わせ通りに愛聖さんのバージョンにはRe:valeの2人が交互にナレーションを入れていて、言わばコラボ作品のような仕上がりになっている。
···と、ここまでは依頼内容そのままの出来栄えで。
なぜ、この映像に···壮五くんと環くんが?
確かにあの日は、MEZZO"の仕事場が偶然にも愛聖さんのスタジオと同じ場所ではあったけど···
不思議に思って、当日同行していた万理くんを呼び寄せ事情を確認しながら映像を見せる。
万「あぁ、これもしっかり撮られていたんですね」
「MEZZO"はこの撮影には参加してなかったと思うけど?」
そう返せば万理くんは、撮影自体には参加してなかったものの、僕が人の仕事を見るのも勉強だと日々話伝えている事で、万理くんが監督に許可を得てMEZZO"の2人を見学させた···という事だった。
万「それで、休憩時間に環くんがスケボーの上達具合いを見てやるって流れになって、スタッフから配られた飲み物を壮五くんが届けて3人で遊び出したんですよ」
「遊び···って?」
万「環くんが少しスケボーが滑れるようになった愛聖にちょっとした技術的なものを教えながら、壮五くんもそこに加わって楽しそうでしたよ。それに現場スタッフさんから差し入れって形でドリンクを配られて、発売前だからって環くんも嬉しそうで」
だから3人とも新商品を手にしているってわけなのか。
まぁ、万理くんの言う通り···3人とも揃って年相応な表情で、楽しそうなのが伝わって来てるし。
現場の緊張した空気が、和らいだっていうところかな?
ひとつひとつの映像をゆっくりと見て行くと、突然驚くようなスチールが飛び出して来る。
「ば、万理くん?···これは?」
一緒に画面を見ていた万理くんの顔を見れば、その画像を見て万理くんが思い出し笑いをする。
万「これは、環くんがその場で教えた事を愛聖が1回で成功して、ご褒美って感じで2人から愛聖に」
「ご褒美って···えぇ?!そうなの?!」
万「改めて見ると、やっぱりなんだか照れますね···これ」