第10章 不測の事態
環「で、ちょっとは滑れるようになったんならさ、いまやってみようぜ?」
『ここで?!···大丈夫かな···一応、監督に聞いてみるから待ってて?』
そう言って監督に聞けば、ケガさえしなきゃオッケーだと快く許可を貰えて、じゃあ師匠は俺だからと四葉さんと2人で広い場所へと移動する。
セットの前で、ひとりボードに足を掛ける。
撮影の時より数段緊張するのは、四葉さんがセットの端で手を振っているからだろうか。
1度だけ大きく深呼吸をして、いざ!と片足を蹴れば、ボードはスルスルと動き出してあっという間に四葉さんの所まで移動できた。
『ね!見た?!ちゃんと滑れてたでしょ?!』
環「おー。ここまで滑れるようになったら、今度はUターン出来るように教えてやるよ。俺がお手本見せっから、ちょい貸してみ?」
じゃあ···と手渡せば、その場でスッとボードに乗って滑り出し、壁にぶつかる!!と思いきやクルリと向きを変えて戻って来る。
それを拍手しながら凄い!と言えば、ちょっと照れ笑いしながら四葉さんが頭をガシガシと掻いた。
環「こんなの簡単だし」
『そんな事ない!ホントに凄い!』
環「マリーも練習すればすぐ出来るって」
いや、そう簡単にはムリですってば···ハハッ···
環「さっそく練習すっか?」
『え?!』
四葉さんがボードを私に向けると、そこへ逢坂さんがドリンクを持って来て私たちに配る。
壮「スタッフさんから、良かったらどうぞ?って」
『あ、これまだ発売前の商品です。私がいま撮影してるのはこれですから』
環「マジで?やった、新商品なのに発売前に飲めるとか超ラッキー」
嬉しそうにキャップを開けて飲み出す四葉さんを見ながら、私と逢坂さんも口へ運ぶ。
『この商品、フレーバーが3種類あるんです。ほら、ちょうど私たちそれぞれ違う味』
ね?とラベルを見せれば、四葉さんは全部飲んでみたいと言って私のボトルに口をつけて飲み初め、逢坂さんが慌て出す。
私は別に、普段から千や百ちゃんや···時々は楽もだけど、ひと口交換してるから気にならないと言えば、そうなんだけど。
でも、そういう所をちゃんと線引きしてる逢坂さんが四葉さんにダメだよ?と言えば···
四葉さんが逢坂さんに半ば強引に飲ませてしまって、逢坂さんが噎せてしまって、つい笑ってしまう。