第10章 不測の事態
MEZZO"の活動も軌道に乗って来ていて、四葉さんともすれ違いの生活が続いていた。
学校から直接現場に向かう事がほとんどの四葉さんが寮に帰る頃には、私が仕事に出ていていなかったり。
私が帰る頃には、疲れて寝てしまっていたり···
スケボーも、逢坂さんを初めとするメンバーに教えて貰って上手になったのに、四葉さんに見せられないなんて。
『つまんないなぁ···』
万「ん?なにが?」
今日は社長がどうしても外せない仕事があるとかで、特別に万理が私のマネージャー代理として仕事に同行してくれてる。
MEZZO"はMEZZO"で紡ちゃんが同行してるから、そうなると現場管理が出来る人材って言ったら限られた人しかいなくて。
Re:valeと同じ現場じゃなくてホッとしてるのも事実だけど、社長が他の誰かより万理をつけてくれたことには有り難いと思う。
『せっかく滑れるようになって来たのに、四葉さんと全然顔合わすチャンスがなくて。きっと四葉さんが見たら···やったじゃんマリー!とか言って笑ってくれそうなのになぁ』
万「愛聖、いまのって環くんのマネ?」
『···うるさいよ、万理』
クスクス笑う万理を軽く押しのけ、メイクの続きをして行く。
って言っても、女子高生スタイルだから普段とあんまり変わらないくらいの···だけど。
髪も緩くまとめて、スポーツ出来そうな雰囲気を消して、最後に衣装に着替える。
『ね、万理どう?意外と似合うと思わない?』
カーテンを元気よく開けてクルリと回って見せれば、万理は笑いながら私を見る。
万「馬子にも衣装···?」
『ちょっと!』
万「うそうそ。ちゃんと似合ってるよ···ホントの学生さんみたい」
『万理···まだ目が笑ってますけど!』
社長とは違う会話のやり取りで、これから撮影に挑む緊張感が解けていく。
『さてと···それじゃ、スタジオに行きますかね···』
万「行ってらっしゃい。あ、俺はちょっと紡さんの方を見てくるから姿が見えなくても泣いたりするなよ?」
『紡さん?』
万「そう。実は今日、MEZZO"の仕事が隣のスタジオなんだよ。だから様子を見てくる」
楽屋を出て、万理と左右に別れて歩き出す。
MEZZO"は···隣のスタジオにいるんだと思うと、それだけで四葉さんが近くにいてくれる気がした。