第10章 不測の事態
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
『やった!さっきより滑れた!』
壮「そうだね、少しずつ上達してるから環くんもきっと驚くと思うよ」
中庭から聞こえる賑やかな声に誘われて、ベランダに出て愛聖さんと壮五さんを眺める。
練習を始めた頃は、ボードに乗る事さえ出来なかったのに、いまは距離は短くても手放しで滑れるところまで上手くなってる。
「仲良いなぁ、壮五さんと愛聖さん···」
それに環だって、仕事がない日は愛聖さんとずっと一緒にスケボーやってるし。
ナ「リクも、行ってみたらどうですか?」
不意にかけられる声に反応すれば、いつの間にか隣にいたナギがオレに微笑んでいる。
「オレが行って、邪魔になったりしないかな?」
ナ「邪魔?ナゼですか?」
「だってほら見て?ふたりとも凄く仲良く練習してるしさ?」
頬杖を着いてナギに言うと、ナギはまるでお日様みたいな笑顔を見せた。
ナ「リクは大好きなんですね、ソウゴとマリーが」
「大好きとか、なんか恥ずかしいな···でも、ナギのこともオレは好きだよ?」
ナ「oh!リクから愛のコトバを頂きました!ではワタシからリクに、素敵な時間をプレゼントしましょう」
素敵な時間って?と聞き返すより早く、ナギは中庭にいるふたりに大きく手を振って声をかける。
ナ「ソウゴ!マリー!ワタシたちもご一緒しても?」
ん···?ワタシ“たち”?!
『もちろんです!ナギさんも七瀬さんも、いろいろ教えてください』
壮「天気もいいし、みんなで練習したら、もっと楽しいからね」
ナ「OK!それではリクと一緒に、お邪魔しマース!」
ポンって肩を叩かれ、ナギがオレに中庭に行こうとウインクをする。
「ナギには···なんでもお見通しなんだね」
そう言って笑えば、ナギも笑った。
ナ「リク。ワタシにも分からない事は···たくさんあります。でも、みんなといるとHappyデース!さ、ソウゴとマリーが待ってますから」
いま···一瞬だけナギは、悲しそうな顔をした気がするけど···
オレの気のせい···?
大和さんに、ナギは掴みどころがないって言われてるのは、そのせいなのかな?
早く早く!と振り向きながら笑うナギに、オレも駆け寄った。