第10章 不測の事態
小「お疲れ様。今日も順調に撮影が進んで良かったね?」
にこにことしながら社長が私に上着を掛けてくれる。
『ありがとうございます。前回のCM撮りとは違って脱ぐカットがないから気が楽です』
小「あれはあれで凄く良かったと思うけど?」
『実際はちょっと恥ずかしかったりするんですよ?大勢の人がいる中で···ですから。ちゃんとスイッチ切り替えないとミス連発しちゃったりとか』
セットをホントの室内だと思い込んで、ここには自分たちだけだとか、いろいろスイッチ切り替えを上手く出来ないと大変だから。
小「そう言えば、スケボーの練習はどう?乗れるようになった?万理くんに環くんが先生をしてるんだってね」
『四葉さんだけじゃないですよ?四葉さんが学校の間は、逢坂さんも。それに最近は他の皆さんも時間があると付き合ってくれます』
ただちょっと、ナギさんは密着度が高すぎるんだけども。
小「みんなボードに乗れるとか、若い子の運動神経は凄いね」
『社長はどうなんですか?』
スマートな立ち姿を見ながら言えば、社長はう~ん···と苦笑を見せた。
小「僕はそういった類は得意じゃないかなぁ。あ、でも、八乙女は昔からスポーツ的な事に関してはピカイチだったよ」
『八乙女社長が、ですか?』
以外だなぁ···と漏らせば、それを聞いた社長が笑い出す。
小「いまはあんな風に眉間に深~い溝を作ってばかりいるけど、昔の八乙女はそうじゃなかったんだよ?取り巻く女性も華やかな人が多くて、彼の周りはいつも賑やかだったよ」
『若かりし頃の八乙女社長···想像つかないかも』
小「そう?ほら、八乙女には息子さんがいるでしょう?TRIGGERの八乙女楽くん。彼は八乙女の若い頃によく似てると思うけど?」
楽が?
八乙女社長の若い頃に似てる?
って事は、楽が社長たちの年齢になったら八乙女社長に変化する?
あれ···なんか、複雑な心境になってきたのは気のせいかな?
その原理で行くと、紡ちゃんは小鳥遊社長に似てくる?!
う~ん···
小「何を考えてるのか予想は着くけど、紡くんは僕より···僕の奥さんにそっくりだよ?」
『あ、はは···そうでしたか···』
予想通りの反応だね?と笑われて、私って考えてる事が漏れやすいのかな?なんて眉を寄せてしまった。
···気をつけよう。