第10章 不測の事態
熱いシャワーを浴びているのに、冷たくなっていく指先の感覚にグッと手を握り締める。
伸ばした髪から流れ落ちる雫が···赤く···染まって見え息が止まる。
「や、めろ···やめてくれ!」
百「ユキ?!どうしたの?!大丈夫?!」
思わず叫んだ僕に、ドアの外からモモが慌てた声で呼びかける。
モモ···?
そうだ···いまはモモが、僕のパートナーだ。
百「···ユキ?」
シャワーを止めて、ドアを開ける。
「大丈夫だよ、モモ···でもちょっと、ゴメン」
モモの顔を見た途端、手繰り寄せるようにモモの体を腕に閉じ込める。
百「え、ユキ?ちょっと?!」
モモの存在が、僕の存在を確かな物へと感じさせてくれる。
僕をここまで連れて来たのは、他の誰でもない···モモだから。
「愛してるよモモ···キス、してもいい?」
百「よく分かんないけど、ユキがそうしたいなら···いいよ」
まるで初めてのキスを待つようにギュッと目を閉じるモモを見て、小さく吹き出す。
百「あ、あれ?もしかしてウソ?!」
「そうね···」
百「オレ今、凄い勢いで腹括ったのに?!」
ユキひどーい!と言いながらも笑うモモを見て、その顔に手のひらを添えて頬に口付ける。
「いつか···世界に2人だけしかいなくなったら、そういうのはモモだけだって、本気で考えるよ」
いたずらに笑って、バスタオルを掴む。
「モモ、作戦会議をしよう」
百「作戦会議?なんの?」
「もちろん、僕たちのおやゆび姫を守り抜く為の···だよ」
髪を拭きながら言えば、モモはなにかを察して顔を強ばらせる。
身支度をしながらも、さっきまでの出来事を全てモモに話せば、モモは万の部分に瞳を揺らしては瞬きを繰り返していた。
「僕たちには僕たちの、守り方がある。モモ···反撃開始だよ」
百「だね!オレたちのおやゆび姫を易々とカエルになんて渡さない!」
「そうね···」
そう言ってモモと2人でこれから先の愛聖のスケジュールと自分たちのとを確認する。
あの女がどう動き出すかは分からない。
だけど···僕に刃を向けた罪がどれだけ重いか。
じっくり分からせる必要はあるからね。