第10章 不測の事態
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
「社長。とりあえず今日の分は終わりましたから、なにかあったら寮にいるので連絡してください」
山積みにされていた書類のパソコン処理を終わらせ、時計を見る。
小「今日も愛聖さんの、かな?」
「はい、まぁ···」
CM撮影でどうしても乗れるようにならたいからとせがまれて、数日前からスケボーの練習に付き合ってはいるんだけど。
小「どう?少しは乗れるようになって来た?」
「それが、まだ全然ですよ。なんせ手放しでボードに乗れないんですから···」
ボードに両足を乗せることは出来るようになった···けど、それはガッチリと俺に捕まってる、というか、しがみついたままでの事で。
「カッコよくスーッと滑れるようになるなんて、まだ夢の先の先の先ですよ」
苦笑を見せながら上着の袖を通し、じゃあ行ってきますと社長を振り返った。
で···さっそくこれだもんなぁ···
『ば、万理!離さないでね?!』
「はいはい···」
相変わらずボードに両足が乗れば、フラフラとバランス悪く揺れては俺にしがみつく。
『絶対離しちゃダメだから!』
「離してないのは愛聖の方だけどね」
『それでも離しちゃダメなの!』
これだもんなぁ。
こんなんじゃ、いつになったってスケボーでカッコよく···なんて先が遠いよ。
待てよ···?
離すな、離すな···ってのは、もしかしてフリか?
なんて、ちょっとしたイタズラ心が疼いて、さりげなく手を離してみれば···
『あっ!』
「危な、セーフ···」
『離さないでって言ったのに!万理のバカ!』
ズルッとボードが動いたことにビビる愛聖が、座り込んで拗ねた。
こうなると機嫌直るまで大変なんだよなぁ。
こういう所は千にそっくりだよ、愛聖は。
ま、そうなると扱い方は慣れてるって言うか。
「ほら、立ってごらん。まずはボードに1人で乗れるようにならないと、カッコよく滑るなんて出来ないだろ?ちゃんとついててあげるからさ?」
『ホントに?絶対離さない?』
「離さない離さない。ほら」
座り込んだ愛聖の前に片膝をついて手を出せば、そこに乗せられる愛聖の手。
よし、今日は機嫌直るの早かったな。
そう思った時、俺たちの前に誰かの足が見えた。