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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第10章 不測の事態


『でも、どうしてもスタントとか使わないで、自分で乗れるようになりたいんです!』

「そうは言っても転んだりしたら元も子もないでしょう。完治に近くなったと言うのは、まだ完治してないって言うことくらい分からないんですか?!」

驚きのあまり、つい口調が強くなってしまい···佐伯さんがシュンとした顔を見せた。

三「まったく一織は···どうしてそういう言い方しか出来ないんだよ。オレもいま聞いてびっくりしたけど、万理さんが着いてんなら危なくはないんじゃねぇのか?」

「そうかも知れませんけど、大神さんは些か佐伯さんに甘過ぎる所もありますから」

これまでの様子を思い起こしてみても、大神さんは佐伯さんを窘めながらも、結局は甘やかす方向に···というのがほとんどでしたからね。

きっと大神さんも、どうしても!お願い!とか言われて、仕方なくケガが治ったらね?なんて甘い言葉でその場を凌いだに違いなさそうです。

『でも、乗れるようになりたいんです···私』

「そうは言っても、なにも経験がなくケガも治りつつあるのに···賛成出来ませんよ」

大きなため息を吐いてみせて、せめて完全に完治してからにしたらどうかと提案するも、それじゃ撮影に間に合わなくなると言って佐伯さんは眉を下げた。

三「あ、いい事思いついた。愛聖、万理さんは教えてくれるって言ったんだろ?そしたら万理さんが付き添ってる時以外はスケボー乗らない、どうしても練習したかったら、寮でヒマしてる誰かにも頼む。絶対に1人で練習しないって約束はどうだ?」

「私たちの中に、教えられるほどの腕前を持っている人がいるんですか?」

三「それはわかんねぇけどさ、乗れないとしても支えてやるくらいなら誰だって出来るだろ?」

大神さん以外にも、甘過ぎる人間がここに···

「仕方ありませんね。そういう約束が出来て安全が確保されるなら、佐伯さん···いいんじゃないですか?」

兄さんに諭されて賛同してしまう私も、佐伯さんには甘めだという事ですか···

『やった!早く乗れるように絶対頑張りますから!』

「言っておきますが、頑張って頂きたいのは乗れるようにではなく、ケガを増やさないって事ですからね」

ツンとした態度で言いながらも、その口元は緩んでいる事に気が付かなかった。
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