第10章 不測の事態
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
学校帰りの道を、ひとりで歩く。
今日も四葉さんは、逢坂さんに迎えに来て貰いながらMEZZO"としての仕事へ向かった。
ほぼ毎回のように逢坂さんに迎えに来て貰うのもどうかと思いますが···仕事に遅れない為には、今は最良だということでしょう。
逢坂さんには、申し訳ない気持ちもありますが···その逢坂さんの負担を少なくする為にも、原因を作ってしまった私がフォロー出来る部分を埋めていかなければ。
寮に戻ったら最初に何をしようかと考えながら歩けば、ひとつ先の路地から見知った人影が2つ並んで出て来るのが見えた。
あれは、兄さんと佐伯さんですね。
あの路地から出て来ると言うことは、整形外科に行っていた?
歩幅を広め、速度を上げながら2人の元へと急ぐ。
「兄さん、こんな所で会うなんて珍しいですね」
ひと声かければ2人は振り返り、佐伯さんは私の姿を見て嬉しそうな顔を見せた。
『お帰りなさい、一織さん』
三「いま帰りか?環は···あ、そうか。今日は壮五と一緒だったよな」
1人でいる事を確認すると、兄さんはそう言って笑った。
「それより、2人でその路地から出て来たという事は、病院にでも?」
そう言って路地を見れば、兄さんは佐伯さんの付き添いをしてたんだと返した。
『見て下さい一織さん!ほら!』
ケガをしていた手を私の前に出して、ふるふると揺らしてみせる佐伯さんはとても嬉しそうに笑う。
「固定具が取れたんですね?それは、おめでとうございます。やっと不自由な生活から解放されますね」
三「だな。別にオレらは面倒だとか大変だったとかは思ってないけど、世話される側からしたら気は楽になるよな?」
確かに、これまで多少の手伝いを必要としてた佐伯さん本人からすれば、誰かに手伝いをお願いする事がなくなるというのは兄さんの言うように気持ちが楽になるのは必然ですね。
『それだけじゃないんです。固定具外れて完治に近くなったから、やっと万理にスケボーの乗り方を教えて貰えるんです!』
三「は?スケボー?」
詳しく聞けば、これから始まるCM撮影の為に乗れるようになりたいから!とニコニコしながら言ってますが···
「あなたバカなんですか?やっと固定具が外れたばかりですよ?!」