第10章 不測の事態
天「ねぇ、ボクもひとつ言っておくけど。愛聖、なんの為にRe:valeまでがここにいると思う?」
千「そうだね。天くんの言う通りだ」
天と千の言っていることに脳内処理が追いつかず、瞬きだけを繰り返す。
楽「さっそくアホ面晒すなよ」
小さく吹き出した楽のおかげで、脳内処理が急加速する。
『楽!さっきからアホ面って!!』
百「そうだぞ楽!マリーはどんな顔してたってカワイイんだからな!」
龍「百さん、それフォローになってないです」
グイッと目元を押さえて、さっきまで潤い放題だったものを拭いとる。
『天、私も龍から千たちがここに来る事を聞いた時、どうしてなのか分からなかったけど、どんな意味が? 』
少し前のめりになりながら聞けば、天はサラッと同じ話を何度もするのは面倒だから···と言い放つ。
千「それ以外にも意味はある。天くんは僕たちが普段から愛聖と距離が近いのを知ってるから、危機管理をさせようとしてるんだろう」
『危機管理?』
千「そう。天くんは、あいつが愛聖になにかするんじゃないか?って予測を立てた。けど、TRIGGERはTRIGGERのスケジュールがある。だから、今回たまたま同じCM撮りをする僕たちなら、なにかあったら動けるんじゃないかって考えたんだろ」
天「まぁ、そういうこと」
百「ユキ凄い!オレそこまで思いつかなかったし!さっすがオレのダーリン!愛してる!!」
千「フフッ···モモ、みんながいる所でやめなさい。見られてると恥ずかしいだろ?」
百「ダーリンったら、恥ずかしがり屋なんだから!」
···これ、どのタイミングでツッコミ入れたらいいの?
シリアスムードでもお構いなしにRe:vale特有の世界に入り込む2人を眺めながらも、頭の中では整理しきれない事柄でいっぱいになっていた。
もし···私が奏音さんと同じ立場だったら、やっぱり自分を苦しめた相手が目の前に現れたとしたら、報復を考えてしまうだろうか。
貼り付けた笑顔を見せながら、距離を詰めようとするだろうか。
彼女がどれだけ辛い思いをしたのかは、想像出来ないけど···でも···
掴みかけた夢を潰されてしまった絶望感は、とても大きいものだっただろうと、胸が痛くなった。