第2章 7つの原石
小鳥遊社長達に案内されながら社内を歩く。
ここが今日から私の···新しい居場所。
この先どんなに大変な事があっても、この背中について行こうと···前を歩く社長の背中を見つめた。
万「愛聖、もしかして緊張してる?···顔、顔が怖いよ?」
歩幅を合わせて隣を歩く万理が顔を覗き、イタズラに笑う。
『失礼ね···緊張しない訳がないでしょ!···万理とは違うんだから、私』
それこそ俺に失礼じゃない?と更に笑って返す万理を見て、紡さんが不思議そうに私達を見比べた。
紡「あの、さっきからずっと思ってたんですけど···大神さんと佐伯さんって、お知り合いなんですか?とても仲良く見えるので」
あ、そうか···小鳥遊社長には何となく話してはあるけど、彼女にはまだ···
万「愛聖と俺は、昔からの知り合いなんだよ。まだ愛聖が、こ~んな小さい頃から、ね?」
『ね?って万理!私そこまで小さくなかったでしょ!』
指先で3センチくらいのサイズを見せて笑いかける万理に、私も笑って返す。
紡「そうだったんですか?ずっとお名前で呼び合っているのを見て、仲良しなのかな?って」
万「いわゆる、腐れ縁···って感じかな?」
『ふ~ん?腐れ縁、ねぇ。いいのかな?万理、私にそんな事を言っても···あのね紡さん、万理ってね···ムグッ···』
万「待て!待て待て!何を暴露するつもりだよ愛聖!」
グイッと私を引っ張り、万理が大きな手で口を塞ぐ。
紡「ほんとに仲良しさんですね、お二人は」
クスクスと笑いながら紡さんに言われて、私達は顔を合わせながら苦笑を漏らした。
小「さ、この扉の向こうにみんながいる。愛聖さん、いいかな?」
ドアノブに手を掛けながら言う小鳥遊社長に、私は万理の手から逃れ簡単に身繕いを整えた。
『ふぅ···ちょっとだけ緊張しますけど、大丈夫です。社長さん、よろしくお願いします』
そう言って小さく深呼吸する私の背中に、万理がそっと手を当てる。
その部分に優しい暖かさを感じながら···開いて行くドアの向こうへと意識を向けた。