第2章 7つの原石
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
紡「大神さん···これは、私の夢···でしょうか?」
打ち合わせルームに移動した俺達にお茶を用意してくれた紡さんが目を丸くして俺の顔を見る。
それもそうか。
少し前までメディアに出ていた愛聖が、ここにいるんだから。
しかも紡さんは。
『今日からこちらでお世話になる、佐伯 愛聖 です。よろしくお願い致します』
紡「は、はい!こちらこそ宜しくお願い致します!···あ、あの、ホンモノの佐伯 愛聖 さん···ですよね?」
『え、っと···はい、ホンモノの 佐伯 愛聖 です』
紡「あの私!ずっとずっと大ファンなんです!ドラマや映画も全部見ました!Blu-rayも全部持ってます!」
そう、紡さんは愛聖の大ファンだから。
『そうなんですか?!ありがとうございます!』
そして身近にいたファンに、愛聖も嬉しそうだ。
ちょっと前の、この世の終わりみたいな愛聖の顔は、出来れば見たくないからね。
紡「Re:valeのお二人とダブル主演された悲恋物、号泣しました!」
ん?
あぁ、あの映画ね。
···千も、百君もいろんな意味で体張ってたやつね。
あの千が、あんな風に演技するとか。
三人が共演してたから俺もBlu-rayは買ったけど···何度見ても泣かされるから最近は見てないな。
千が愛聖の婚約者で、重い病気で入院してる先の医療スタッフが百君で。
懸命な治療虚しく、千は愛聖を想いながら逝くんだけど。
その時の愛聖の感情表現が···あ、ヤバい。
思い出すと泣けてくる。
小「紡くん?そろそろ落ち着こうか」
紡「すみません···」
···俺もちょっと落ち着こう。
スンと鼻を啜って前を向く。
小「万理くん、紡くん。これから愛聖さんをみんなに紹介したいと思うんだけど、全員揃ってるかな?」
紡「大丈夫だと思います。さっき一織さんと環さんの姿を見ましたから、レッスン場にみんなでいると思います」
いよいよ、か。
みんな、どんな顔をするかな?
小「うん、じゃあ早速行ってみよう。もちろん僕も」
きっと、驚くだろうなぁ。
この後を想像して、ひとり小さく笑った。