第10章 不測の事態
小「まぁ、手遅れだと思うけど···」
ニコニコとしながらドアを指差す社長を見て、窓ガラスに写る私の背後を見れば、閉めたハズのドアから万理が顔を出していた。
万「えっと···ノックはちゃんとしましたよ?それに社長に一織くんが用事があるっていうから一緒に連れて来たんだけど···マズかったですか?」
小「大丈夫だよ万理くん。さ、中へどうぞ?」
社長···全然大丈夫じゃないですよ?!
万「でも、今お取り込み中では?」
もしかして万理、私だって気付いてないのかな?
小「ん?別に構わないよね、愛聖さん?」
『もう···なるようになれ、です』
万「え?愛聖?」
社長に名前を呼ばれてしまっては隠せるはずもなく、仕方なく振り返る。
『は···ハ~イ?···』
万「···なにしてるの、愛聖?」
『今度のCM撮影で割り当てられた衣装の試着をって、社長に呼ばれて···かな』
苦笑を滲ませながら答えれば、万理がスッと横を向いて口元を押さえた。
万「に···似合ってる、よ」
笑ってるし···
だから言ったじゃないですか!と抗議の目で社長を見れば、社長はさっきと変わらない表情でイスから立ち上がった。
小「万理くん。愛聖さんの今度のCMは役どころが面白くてね。設定資料はこの前も見せたけど楽しみにしてるといいよ。僕は撮影に付き添うから全てを見れるんだけど、それでも撮る前から仕上がりが楽しみだと思ってるよ」
設定資料は私も面白そうだなとは思ってた。
ひとりの女子高生の成長が見られるストーリー性のある内容で、前にTRIGGERと共演したものとは違ってどれだけセリフがない中でストーリーと商品を全面に出せるか···そこが勝負どころだって説明もあった。
特に、あ!これ面白いかも!って思えたのは、私が撮るCMのナレーションはRe:valeが、そしてRe:vale側のナレーションは私が入れる事になってる。
それで、Re:valeがナレーションを入れるから私の方のCMがストーリー事に千と百ちゃんが交互にって監督が話してた。
向こうのは、一種類だけだからよろしくね?とは言われてるけど。
それよりも私の方が大変な撮影だよ···
だって、スケボーなんてやったことないんだから。
どんな体幹してたら、スルッと乗れたりするんだろう。