第9章 ふたりぼっちのスタート
万「···そんなことがあったのか」
部屋に入って早々に、今日あった出来事を万理に話してみる。
『そうなの。それで、その人がRe:valeの控え室を出ていった後に、千にチクッと怒られちゃって』
万「まぁ、千の言いたいことも分からなくもないけどね。で、その新人の人ってのは、本当に愛聖の事を憧れてるのかな?って俺はちょっと疑問に思う」
変な言い方ではあるけど、と万理が付け足して、
少しだけ何かを考え始めた。
万「例えばさ?千たちに近付いて来たのは、純粋に追っかけとかファンなのかも知れないけど。千がそれに対して怒ったのは、多分···俺のこともあるのかな?とも思う。昔からRe:valeが好きでって言うなら、俺の存在も知ってるだろうし」
『でもその人は、初めて見たライヴが千と百ちゃんのRe:valeだったみたいだけど?』
万「だからだよ。当時のRe:valeの楽曲は俺と千が作ったものしかなかったし、その人を連れていった友達ってのがそもそもRe:vale推しだったら、当然···前の形のRe:valeの事を知らないハズがないだろ?」
そう言われてみれば、確かにそうなのかも?と私も妙に納得してしまう。
『でも、ウソを言ってるようには感じなかったけどな···だけどひとつだけ疑問に思ったけど聞けなかったことがあってね···その人、いまの事務所に入る前は、何度も八乙女プロダクションのオーディションを受けたけど実らなかったって』
万「あれ?俺の記憶が間違っていなければ八乙女プロダクションはオーディションはやってなかったと思うけど···」
『万理もそう思う?私も八乙女社長からオーディションでタレント発掘してるって言うのは聞いたことがないからって思ったけど、もしかしたら私が知らないだけなのかなって』
オーディションなんてやってたら、もっともっと研修生とかたくさんいると思うし。
私と同じ頃に研修生としてレッスンさせられてた他の人は、みんな八乙女社長に声を掛けられたって言ってたから。
万「ウチの事務所も外部考察のオーディション自体はやってないんだよ。だから、アイドリッシュセブンのメンバーも社長が自ら声をかけて集めて来たって感じで···」
じゃあ···どうしてあの人は、そんなことを言ったんだろう。
すぐにバレてしまうような嘘をつくようには見えなかったけど。