第9章 ふたりぼっちのスタート
揺り起こされて目を覚ませば、そこはもう寮の前だった。
慌てて社長に寝てしまったことのお詫びをして、手荷物を···と思えば、逢坂さんが私の荷物まで運んでくれていて。
MEZZO"として歩き始めて疲れているはずなのに申し訳ない···と逢坂さんにも謝った。
寮に入れば三月さんがリクエスト以上の食事を用意してくれていて、先にみんなは食べ終わってたから、逢坂さんと四葉さんと3人でテーブルを囲んでいた。
環「みっきー、おかわり!」
三「はいよ。壮五と愛聖は?」
四葉さんからお皿を受け取りながら、三月さんが私たちにも声を掛ける。
壮「僕は大丈夫だよ」
『私も大丈夫です、お腹いっぱいになりました。それに···三月さんがクロワッサン焼いてくれてるなんてびっくりです』
食べる時間に合わせて温められたクロワッサンは、サクサクして、中はホワホワで。
『夢の中でもひたすら食べちゃいそう···』
三「夢で食うならいま食っとけよ!」
ぽろりと漏らした言葉に三月さんの鋭いツッコミが入り、みんなで笑い合った。
三「パンならたくさん焼いてあるから、朝飯にでも食えるから。それより、壮五たちは今日どうだったんだ?環は元気なまま帰って来たけど、壮五は疲れた顔してるじゃねぇか」
壮「それは、まだ馴れない現場で動かなきゃならない部分が多くて···でも、大丈夫。それは僕だけじゃないし、環くんだって同じだと思うから」
『私もそれは分かるなぁ。だって私、未だにバタバタしちゃうし、怒られることもあるし』
三「愛聖でも怒られることあんのか?だってキャリアからしたら、そこら辺のタレントより豊富だろ?
」
そう言われても、なんか怒られちゃったりするんだよね···と笑って返す。
万「あ、いたいた···まだ起きてた」
こんばんは~と、呑気な感じで現れる万理に、私たちはポカン···とその姿を見続けた。
万「社長から愛聖に渡して欲しいって頼まれてさ。明日でも良かったんだけど、事務所から近いし持って来ちゃった」
もし、寝てたらどうしたんだろう?と思いながらも手渡される書類封筒を受け取り、中を覗く。
『これは?』
万「社長がね、近々行われるドラマとか映画のオーディションの日程を纏めておいたからって···これからいろんなことにチャレンジするんだろ?」