第9章 ふたりぼっちのスタート
学生だからとか、子供だからという理由で許される世界じゃない。
だからせめて、もう少し環くんにも時間を守るルールを身に付けて貰わないと···
課題を忘れたり、居眠りしたりという理由で今日みたいに掃除当番をさせられるようなことがないように、僕ももう少し環くんを見てあげられるように自分の生活時間を調整しないと···
「環くん、今日は課題は出てない?もし出てるなら、帰ってからまた僕が教えてあげるから」
環「そーちゃんが?」
「そうだよ?毎回ずっと愛聖さんに教わる訳にはいかないだろ?愛聖さんだって、こんな風に疲れてしまっているんだから」
環「そうだけど···でも俺、マリーに教わると超ヤル気出るんだけど」
僕だけの時でも、そのヤル気は出して欲しいんだけどな。
小「環くんは、愛聖さんのことが好きなんだね~」
環「ぅす、超スキ。マリーって、いつも王様プリンくれるし、お菓子買ってくれるし、それになんか···よく分かんないけど、一緒にいると暖かい感じがする」
小「なるほどね···そういう事か。環くんはもしかして、愛聖さんから母性を感じ取っているのかも知れないね」
「母性···ですか?でも愛聖さんと環くんは年もそんなに変わらないのに」
僕は、別に愛聖さんから母親的な暖かさは感じないけど···
小「凄く分かりやすく言えば、万理くんと愛聖さんの関係みたいな?愛聖さんはまた物心着く前に父親を亡くしていて、母親とずっと2人で生活してた。けど、思春期に入る前に万理くんと知り合って···今に至る、とか」
万理さんと愛聖さんの関係は特殊な感じではあるけど。
それ立場を環くんと入れ替えて考えてみると分かるのかな···?
万理さんにするように、愛聖さんにベタベタに甘える環くんを想像して、なんとなくモヤッとする自分がいる。
なんでだろう···複雑な気持ちになったんだけど。
小さく息を吐いて想像の賜物を振り払い、生まれた複雑な気持ちの正体がなんなのか···それだけを考え始めていた。