第9章 ふたりぼっちのスタート
『これで大丈夫だね。私も都合ですぐには返事できない時もあるかも知れないけど、必ず返信はするから』
「はい!ありがとうございます。あ···私そろそろ戻らないと!マネージャーにすぐ戻るように言われてたので」
時計を見て慌て出す彼女を見送り、そっとドアを閉める。
私の周りって、男の人が多いから···こういうのって少しくすぐったい感じがする。
あ···姉鷺さんは···まぁ、お姉さん?だけども。
千「愛聖、向こうから連絡があったら僕にも教えて」
『どうして?』
千「いいから。ちょっと···嫌な予感がする」
百「実はオレもユキと同じこと思ってた。なんか変じゃない?急に現れてマリーのこと憧れててとかさ?」
『なんで百ちゃんまで···誰にだってそういう時期ってあるんじゃない?』
確かにいま話をしていて、あれ?って感じる部分が皆無だった訳じゃない。
けど、これから一生懸命この業界で頑張ろうとしてるのに、それを怪しいとか嫌な予感がするとか、そういうのはダメでしょ?
それを伝えると、千は不機嫌な顔を見せて口を噤んでしまった。
こうなるともう、千の不機嫌はなかなか直らないことは長い付き合いで重々承知してるから···私から折れない限りは話が進まない。
『分かった。なにかおかしいな?って思った時は、必ず千や百ちゃんに相談するから。それなら、いい?』
千「···絶対?」
『絶対。ちゃんと約束する』
千「じゃあ、約束のキスは?」
『それは···しません』
千「今回はしないの?」
『今までだってしたことないでしょ!!』
フッ···と笑う千に軽くパンチをしながら言えば、それを見て百ちゃんまで笑い出す。
百「ユキにキスしたら、オレも!って言おうと思ってたのに、残念!」
『だからしないってば!逆なら考えるけど?』
「「 考えるんかい! 」」
『でも、考えるだけ。ホントにしたら絶交するからね』
「「 絶交されてもいい!! 」」
『こういう時だけ声を揃えないで!』
そんな日常的なじゃれ合いをして3人で笑いながらも、千が言った嫌な予感というのが···後に事件を引き起こすなんて、私は予想もしていなかった。