第9章 ふたりぼっちのスタート
ゆきりんと、ももりん?
···四葉さん、意外と大物だわ。
百ちゃんはともかく、千がそう呼ばれる姿を想像して笑いが込み上げるのを堪えて小刻みに方を揺らす。
『ゆっ···ゆきりん···』
堪えても堪えても、おかしくて仕方ない!
千「愛聖···おまえはいい先輩を持ったな···」
ちょっとふてくされる千がまたおかしくて、遂には堪えきれずに吹き出した。
『ゆきりん、とか···かわいいんじゃない?私も呼ぼ、』
千「おまえはダメだ」
『じゃあ、昔みたいに···ゆっきー』
千「そっちはもっとダメ」
ギュッと鼻先を摘まれ、ジタバタしていると···不意に感じる視線に顔を向ける。
誰だろう···あの人。
なんか凄い、こっち見てる。
やっと解放された鼻を擦りながら千にもそれを伝えると、千は少し眉を寄せながらため息を吐いた。
千「今回のCMで、僕たちと共演する新人の女。さっき控え室に挨拶に来た。でも僕はハッキリ言って、あんな女には興味ない」
『共演者なのにそんな言い方はダメでしょ』
千「興味ないものは興味ない。仕事のパートナーとしてガマンしてやるだけ」
『そんなこと言わないの。新人さんだったら、もっと優しくしてあげなきゃ?緊張だってするんだし、そういう時は千たちが仲良くしてあげるとか、いろいろあるでしょ?』
私だって、キャリアはそこそこあっても撮影となれば緊張するんだし。
千「じゃあ聞くけど。愛聖は、僕がどこの誰だか分からない女とよろしくしてても平気なの?」
どこの誰だかって、千···言い方がトゲトゲしいんだけど。
あくまでも軽く敵意を見せる千に困っていると、百ちゃんがこっそり私に耳打ちをする。
百「さっき挨拶に来た時さ。あの子、ユキを怒らせたんだよ···デビュー前からRe:valeの追っかけしてたとか言って、まるで···バンさんの存在を知らなかったんだ」
万理の存在···か。
デビュー前からRe:valeを知ってて追っかけをしてたなんて言ったら、千からしたら···まぁ、万理のことを知らないってなれば拗ねるかも···?
でも、万理がいる頃からのファンだとしても、それはそれで千は不機嫌になるんだろうなぁ···
百ちゃんから事情を聞かされてるうちにスタッフが揃い、名札が置かれた席に座るように促された。