第9章 ふたりぼっちのスタート
社長と一緒に打ち合わせのあるテレビ局の一室へと入る。
本来は局でCMの打ち合わせって言うのはそうそうないんだけど···
Re:valeのスケジュールの都合で局の会議室を借りたらしく、それを聞くとやっぱり千たちは来るのか···と苦笑が漏れた。
···のも、束の間。
百「マリーー!さっき下で壮五と環に会ったよ!」
私を呼ぶ声と同時に訪れる大きな衝撃で、長テーブルにゴツンとおでこをぶつける。
『も、百ちゃん···前にも言ったけど、背後から突撃禁止!それから重たいよ!』
おでこを押さえながら顔を上げれば、いつもの感じで···
百「あー···ゴメンゴメン!だってマリー見つけたからワクワクしちゃってさ」
ワクワクってなんですかね···
『あ、そうだ。社長、MEZZO"のお仕事って、ここの局だったんですね』
小「そうだね。今日は歌番組の収録だから、早めに局入りしなきゃって壮五くんも言ってたよ」
『歌番組···』
MEZZO"が先駆けてデビューする時、社長はあの日···一織さんがミスをした曲をMEZZO"のデビュー曲として逢坂さんと四葉さんに引渡した。
歌詞はリメイクされていたけど、メロディーラインはそのままで。
それを知った時、一織さんは···みんなは複雑な気持ちだったんだと思う。
それでも、みんなはそれぞれがMEZZO"として歩き出す2人の背中をおした。
歌詞を見せてくれた時、ちょっと切ない内容にしんみりした記憶はまだ新しい。
百「そう言えばマリー、環ってなんか面白い子だよな!ユキの事をゆっきーとか言ってた」
四葉さん···ホントにゆっきーって呼んでみたんだ?
ってことは、千が黙ってこっちを見てるのは···それが関係してる?!
なにか言いたげに私と百ちゃんを見続ける千に視線を流せば、それに気が付いた千が足を向けた。
千「愛聖。おまえはとんでもない爆弾を環くんに仕掛けたね?」
『爆弾っていうか、たまたまそういう話題になった時に呼んでみたら?って言ったよ?···ダメだった?』
えへへ···と笑いながら返せば、千は小さく息を吐いてぶつけたばかりの私のおでこを指先で突っついた。
千「そのおかげで、僕は新しい呼び方をされる事になったんだよ」
百「そうそう!ユキはゆきりんで、オレはももりん!」