第9章 ふたりぼっちのスタート
❁❁❁ 百side ❁❁❁
「ユキ、いまのはダメなんじゃない?またおかりんが泣いちゃうよ?」
千「そうね···」
「そうね···じゃなくてってさ!いまのって、オレたちがこれから共演するタレントでしょ?そりゃ確かにオレも、マリーじゃないんだ···とか思っちゃったけどさ」
マリーからCMの仕事を貰ったんだって聞いて、前のTRIGGERとのCMを思い出して···おかりんに頼
頼み込んだんだよね、オレ。
···あとユキも。
自分たちもマリーとCMやりたい!お願い!って。
そんな風に騒ぎながら局内を歩いてたら、偶然その監督が居て、その場で話が進んじゃって。
なのにユキってば、あんな風に共演するタレントさんを追い返すとか。
多分···ユキを不機嫌にさせたのは間違いなく、向こうなんだけど。
デビュー前のRe:valeからファンだった、とか。
初めて見たステージでユキとオレがキラキラしてた···とか言ってた。
それってさ、バンさんのいた頃のRe:valeを知らないって事じゃん?
だからユキは···それを怒ってるんだと思う。
いまのRe:valeは、バンさんがいたからこそのRe:valeだから。
そう考える度に、オレはまだ···ユキの心の立ち位置に並べてないんだなって、ちょっと思ったりもするけど。
バンさんがいなくなってから、音楽を辞めるっていうユキを説得して、説得して···土下座までして、音楽を辞めることをやめてもらって今日まで来た。
それでもまだ···オレはユキの思い出の中にいるバンさんとは程遠いんだって、思うよ。
ユキの中のバンさんを越えたいとか、そんなのは思ってないけど···もう少し、寄り添いたいとはいつも思ってる。
千「モモ。あの女は···僕たちのネームバリューを利用しようとしてた」
冷めきったカップに口を付けながら、ユキが眉を寄せる。
「そんなのわかんないじゃん?」
千「分かるよ。だいたい、先輩である立場の人間のところに挨拶に来るのに、あんな露出度の高い服なんて着ないだろ。胸元は丸出し、足も丸出し、全てに置いていろいろ丸出し···愛聖とは正反対」
「丸出しでマリーと正反対って···あ、でもさ!
胸の大きさはマリーと同じくらいじゃなかった?」
身振り手振りで笑って見せる。