第9章 ふたりぼっちのスタート
「そうね···僕たちに今いちばん必要なのは、オフかも知れないね」
百「だね!じゃあ、おかりんに頼み込んで休み増やして貰っちゃう?なんてね!」
なんとかこの場を収めようとするモモがいつもの何倍も笑顔を見せる。
「もし、お休みが取れたら一緒にどこかへ出掛けませんか?」
は?
誰が···誰と?
「私なら、おふたりを癒してあげられると思うんです。おふたりの望む癒しを、叶えてあげられると」
さすがに突拍子もない発言に、モモが言葉を無くす。
「こら···急になにを言い出すんだ。Re:valeさんが困ってるだろ」
百「あぁ···まぁ、ちょっと百ちゃんビックリ!」
「ダメでしょうか?私ならまだ駆け出しでスケジュールの都合も付けやすいので」
ふ~ん···駆け出し、ねぇ···
僕が知ってる駆け出しの誰かさんとは、全然タイプが違う。
「駆け出しなら、僕らの為に時間割かないで仕事貰えるように努力する方が優先なんじゃない?それに、僕らを癒すのは···お前じゃない」
百「ちょっとユキ!女の子にお前って言っちゃダメ!ちゃんと名前くらい呼んであげて!」
「その必要はないよ。どんな理由で僕たちに近付こうとしてるのかは知らない。だけど、どんな理由であっても、僕に必要なのはここにいる売名したい駆け出しのタレントじゃない」
「ひどい···私、売名だなんて···ホントに、純粋にファンだったのに」
「大方、Re:valeである僕かモモのどちらかとすっぱ抜かれでもすれば名前だけは周知される。なんの根拠や証拠がなくても、ね。それに、ファンだったって言い切るあたり、それはもうRe:valeのファンじゃないんだよ」
デビュー前のRe:valeを知ってる?
僕とモモがキラキラしてた?
そんなの···万や愛聖がいたから僕もモモも輝けたんだ。
万の存在も知らない人間に、デビュー前からファンだと言われてもなにも嬉しくなんてない。
「あぁ、そうだ。心配しなくていいよ···仕事は仕事として、ちゃんと笑う‘ フリ ’はしてあげる。でも、あくまでも‘ フリ ’だけどね」
トドメの言葉を吐き出せば、顔色を変えた2人が部屋から出て行った。
結局、僕らに近寄る人間なんて···こんな程度のトゲで退散するヤツらばかりだ。
盛大にため息を吐きながら閉められたドアを見続けた。