第9章 ふたりぼっちのスタート
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
はぁ、いま何時だろう。
部屋の明かりを消してから随分経つと思うけど、妙に背中が緊張して寝付けない。
誰かと一緒に寝るなんか一織で慣れてると思ったけど、一織とは違う。
耳を澄ませば一定間隔の呼吸が聞こえて来て、愛聖は完全に寝入ってる事が分かった。
同じ体制でいるのも結構しんどいし、もう寝付いてるならちょっとくらい動いても起きねぇだろ。
割り当てた毛布に包まりながらゴロンと体の向きを変えれば、目の前に迫るモフモフした愛聖の···フード。
寝る時にフード被ってるとか変わってんな?と思いつつも、一織が小さい時も寒いとか寝癖がとか言ってパジャマ代わりのパーカーのフード被ってたのを思い出す。
って事は、寒いのか?
そっと手を伸ばして愛聖の毛布を肩まで掛け直し、その上の布団もしっかりと被せてやる。
こんなもんか?
にしても、やっぱ枕ないと首痛くなりそうだよな?
なんか枕の代わりになるものっていっても、クッションもぬいぐるみもオレの部屋にはねぇし。
枕の、代わりになるもの、か。
『万理の家に居候してた時も、腕枕でくっ付いて寝てたから』
腕枕···って、言われてもなぁ。
でも、寝違えたとかになったら、それだけで1日を不快に過ごさなきゃなんねぇのも可哀想っちゃそうだよな。
腕枕、やって···みっか?
愛聖を起こさないように、そっと、ゆっくりと腕を通して···なんとか腕枕は出来た、けど!
『ん~···』
モゾっと愛聖が動いたかと思えば···なんでこのタイミングで寝返りすんだよ?!
あまりの近さに思わず息を止め、なんとか距離を離そうともがいてみても、距離が開くどころか···更に寄り添ってくる愛聖。
『万理···寒···ギューして』
え、万理さん?
いやその前にギューってなんだギューって?!
万理さん···あんたどういう寝方してんだよ!
ピッタリとくっつく愛聖にハンパない動揺を見せながら、今からオレは万理さんだ!と何度も自己暗示をかけ腕を回す。
万理さん、愛聖を抱きしめて寝るとか、どんだけハートが強いんだよ。
尊敬の念を送りながらも、この事態が夢でありますように···と目を閉じた。