第9章 ふたりぼっちのスタート
三「で、こうなるとはなぁ···ま、仕方ねぇか?」
二階堂さんはダメ。
逢坂さんは名乗りをあげてくれたけど、二階堂さんが自分がダメなのに?と拗ねて、辞退。
七瀬さんもナギさんも、もちろん一織さんも未成年だからという理由から却下されて。
だったらいっそ万理に頼むよ、まだ事務所にいるだろうからと言ったものの、一織さんが···
一「兄さんなら、誰も何も文句はないのでは?面倒見もいいですし、何より安心出来ます」
なんて言い出すものだから、なぜかみんな妙に納得して今に至る、みたいな。
三「愛聖は枕変わると寝付けないタイプか?もしそうなら今のうちに環の事は気にしないで引っこ抜いて来い?」
『それなら大丈夫です。万理の家に居候してた時も、腕枕でくっついて寝てましたから』
三「腕枕···それは、ハードル高過ぎる···」
『三月さんは普通に寝てて貰って大丈夫ですよ?私はとりあえず、四葉さんの部屋から毛布だけ借りて床で転がって寝ますから』
三「あのなぁ、そういう訳にもいかないんだよ」
だけど、どう見ても三月さんのベッドはシングルだし、2人で寝るにはきっと狭い。
それに、私としては部屋に入れて貰えただけでありがたいし。
三「うっし、こんなもんか?さっき一織が予備の毛布貸してくれたから、毛布はオレと愛聖で1枚ずつ。んで、掛布団はこれっきゃねぇけどなんとかなるだろ」
ポンポンッとメイキングの終わったベッドを叩いて、三月さんが手招きをする。
『今更ですけど、ホントに?』
三「ホントにもなにもねぇだろ?愛聖は活動再開してるんだし、風邪でもひかれたらオレらにも責任あるからな?それに、オレらはまだ···ま、気にすんなってことよ」
『寝相悪いかも···』
三「平気平気!一織が子供の頃なんて、毎晩ケリとかされてたから慣れてるよ。ほら、早く来いって」
先にベッドに入った三月さんに言われ、おずおずとベッドに入れてもらう。
『おやすみなさい、三月さん』
三「お、おう。おやすみ」
何となく照れくさくてお互い背中を向けたまま電気が消される。
万理でも千でもなくて、百ちゃんでもない気配に緊張して来る。
羊でも、数えようかな?
こっそりと頭の中で羊を数え出せば、いつしか羊の輪郭がボンヤリとしてきて···数える気力が、途切れた。