第2章 7つの原石
❁❁❁ 小鳥遊 紡side ❁❁❁
「はい、分かりました。お部屋の用意をしておきますね。え?あ、はい大神さんにもお伝えします」
お父さ···社長からの連絡にそう返事をして通話を終える。
万「いまの、もしかして社長から?」
パソコンと向かい合っていた大神さんが、その手を止めて顔を覗かせ私に聞いてくる。
「はい、もうすぐ着くから打ち合わせルームを用意して置くようにとの事でした。それから、私と大神さんは社長が着いたらすぐにその部屋に集まるようにとも言ってました」
万「わかった、ありがとう」
そう言えば今朝、一緒に朝ごはんを食べてた時···今日は特別な日だからドキドキする、とか話してたけど。
いったい何のことだろう?
あ、でも!
契約書とか、誓約書とか···そういった所属に関する書類をプリントアウトしてたから、誰かスカウトしてた人の所属が決まった、とか?
それより、万が一にも大切なお客様とかだったりしたら···
いずれにしても、すぐにお部屋の用意をしなきゃ。
「大神さん、先に行って準備してますね?大事なお客様だったりしたら、お待たせするのは失礼だし」
机の上を簡単に纏めながら言うと、大神さんはそんなに慌てなくても大丈夫だよ、と笑った。
「あの、もしかして大神さんは、社長が誰を連れて来るのかご存知なんですか?」
万「ん~···細かい事は言えないけど、知らないわけじゃないよ。よし、俺も作業終わり!一緒に準備しに行くよ」
軽く身支度をする大神さんを待って、二人で打ち合わせルームへ向かい、空気を入れ替えるなどしている内に社長が戻って来た。
「社長、お帰りなさい。お部屋の用意は出来てます」
小「ありがとう。紡くんは、お茶の用意を頼める?万理くんはちょっといいかな?」
私達にそれぞれ声を掛け、社長は大神さんを連れて社長室へと入って行く。
いま、社長からフワリと漂った香り。
今までそんな香り、してたっけ?
あれ?
そういえば、大神さんからも同じような香りがしてたような?
誰かの···残り香、とかだったら。
と、すると···今日会いに行っていた相手って言うのは女性?!
いやいやいや、お父さんはそういう人じゃない!
大神さんなら···有り得···なくもない?
僅かに残る疑問に戸惑いながら、給湯室へと向かった。