第1章 輝きの外側へ
そんな別れから、何日過ぎたのか。
私は、やはり行く宛もなくその日暮らしで生きている。
漫画喫茶や、ビジネスホテル。
コツコツと貯金はしてたから今のところ寝泊りには困ってないけど、家を借りるにはちゃんとした住所がない。
行く宛はある。
なんて、強がりで言った自分にイラつきながらも、どうする事も出来ない現実に追われ嘆く暇もない。
居住がなければ、就活も出来ない。
所持金だって、いつかは尽きてしまうだろう。
その時が来たら、私は···
ー ねぇねぇ!Re:valeの新曲PVが流れてる!早く早く! ー
Re:vale?
聞きなれたユニットの名前に釣られて、私も周りの人達の目線の先を見る。
『千···』
過去に同じ夢を追っていた仲間のひとりを見て、誰知らず涙が零れ落ちた。
駅前の大きなビルのパネルに映し出される彼の姿は、いつまでもキラキラとしていて。
もうきっと会うこともないだろう彼の姿と、未だ行方が分からないもう一人の仲間の姿が心を埋める。
手を伸ばせば届きそうで、届かない光。
もうきっと、触れる事のない光。
伸ばした腕を下ろし、ひとり雑踏の中へと歩き出す。
行く場所も、帰る場所も、待つ人もいない。
この広い都会の中、私一人くらい消えてなくなったって誰も困らない。
きっと私がそうなっても、誰も気付かない。
だったら、いっそ···このまま。
私が消えてなくなる前に、神様どうか···もう一度あの人に会わせて下さい···なんて、そんな事、神様だって困るよね?
滲み続ける目を擦りもせず、フラフラと歩く。
人混みに押され、ぶつかり、その窮屈な人の流れから開放された瞬間···
間近で聞こえるクラクションの音と、眩しい光に身動きが取れずに立ち竦んでしまう。
ー 危ない!! ー
急に引き寄せられる力にバランスを崩し倒れ込むのと同時に聞こえる急ブレーキの音。
ー ふぅ、危機一髪···大丈夫ですか?怪我は? ー
体を固くする私に穏やかに言葉を掛ける誰かの···声。
『すみません、でした。ボンヤリしていて』
助けてくれた誰かに謝りながら顔を上げると、そこに居たのは···探しても探しても、見つける事が出来なかった姿で言葉に詰まった。
ー ケガがなくてよかっ···愛聖··· ー
『う、そ···』
神様は、いた。