第9章 ふたりぼっちのスタート
『ここはこの数式を当てはめて計算すれば···ほら、解けたでしょ?』
環「おぉ、解けた。やったぜ!」
私の部屋で勉強会したいと言う四葉さんが、ミニテーブルの向かい側で嬉しそうな顔を見せる。
壮「愛聖さんって、前から思ってたけど教えるの上手だね」
『そうかな?私も子供の頃は勉強とか宿題とか、ずっと見て貰ってたから。だから教わる側がどう説明されたら分かりやすいのかとか、どんな風に言葉にしたらいいのかってのが分かるのかもね』
環「マリーは誰に教わったの?···マリーの母さん?」
筆記用具を筆箱にしまいながら、四葉さんが言う。
『ん~···私って物心つく前に父さん亡くしてて、その後はずっと母さんと2人だったし。その母さんは仕事いくつもかけ持ちしてたから、勉強を見てくれたのって隣の部屋に住んでた万理とか、万理のとこに出入りしてた千だよ』
万理がバイトでいない時は、先に来てた千が私の家で留守番がてら宿題見てくれたし。
母さんも万理と千には絶対の信頼と信用を持ってたから、私と家に2人でいてくれる方が安心!とか言って、ご飯も食べて行きなさいよ?とか笑ってたし。
万理はひとり暮らしだったから母さんが作る食事を有喜んでたし、あの千でさえニコニコして母さんとキッチンに立ってたり。
壮「そう聞くと、錚々たる人達に教えられてたんだね」
錚々たる···そうかな?
だって万理と千だし?
『あ、錚々たるっていうなら、もう1人いるよ?八乙女社長』
「「 えっ?! 」」
『あっ···』
しまった···いまこのメンバーの時に出す名前じゃなかった。
『えっと、なんか···ゴメンなさい』
言ってしまった事を取り消すことが出来ない代わりに、八乙女社長の名前を出してしまったことを謝った。
環「あのオッサン、なんかマリーに勉強教える時も偉そうにしてそう。あと、スパルタっぽい」
壮「環くん!それはちょっと失礼だよ?ね、愛聖さん?」
四葉さんの発言に慌ててフタをするかのように振る舞う逢坂さんが、私の顔色を伺うように苦笑を浮かべる。
『大丈夫だよ逢坂さん。それに四葉さんが言うように、確かに腕を組んで怖ーい顔をしながら教えてくれたから。スパルタの度合いは···千の方が上かなぁ。よく泣かされたし』