第9章 ふたりぼっちのスタート
「抱かれたい男No.1の俺に気持ち悪いとか言うな」
フン···とドヤ顔を見せて、それらしく髪を掻き上げて息を吐いた。
天「そうだね。楽は確かにイイ男の象徴かも知れない。けど、肝心の誰かさんは···楽に抱かれなくてもいいってハッキリ言ってたよね。移籍会見の後の控え室で」
分かっちゃいるけど、つくづく可愛げのないヤツだ···天は。
天「誰かに甘えたい時は、楽じゃなくても甘えさせてくれる場所があるみたいだし。ね、龍?」
龍「あぁ、千さんの事を言ってるのか?」
天「そう。その相方も、だけど」
確かに愛聖は前からRe:valeの2人とは交流があった。
いつもなら他社タレントと深く付き合うなって言う親父でさえ、愛聖に関してはそうは言わなかった。
俺とRe:valeの2人と、なにが違うんだ?
アイツが甘えてきたら、俺だってそれなりに···まぁ、なんだ。
甘えさせてやる、ってのはなんか違うな。
上から目線な感じは···違うよな?
龍「オレは愛聖が甘えたそうにしてると、なんとなく分かるよ。だからそういう時は、先読みして···頭ぽんぽんしてみたりとかあるけど、そういう時のちょっと嬉しそうな顔って擽ったいよな」
「甘えたそうな時って、いつなんだ···?」
大体にして俺といる時は、そんな甘い時間なんて皆無に近いぞ?
天「龍はトンチンカンな楽と違って、Re:vale寄りかもね。ちなみにボクも分かるよ。でも、敢えて毎回は甘えさせない。そういう人間の扱い方は慣れてるから」
龍はともかくとして、天まで?
なんで俺だけ分からないんだ??
天「楽、優しいボクからいい事を教えてあげる。愛聖が普段使いしてるネックレス···あれは社長がプレゼントした物だって、知ってた?」
「親父がプレゼントだって?!」
···知らなかったな、それは。
天「普段使いするほど気に入ってるんだから、センスはパパに習い直したら?」
「っ···誰があんなヤツに!」
クソッ···俺のセンスは親父より劣ってるっていうのか?!
苦々しい気持ちを噛み殺しながら、ムカつく笑い方の親父を思い浮かべて···その想像の姿に心で悪態をついた。
帰ったら···じっくりサイトを見直すか···
そんな呟きをも、心で唱えながら。