第8章 新たな一歩へ
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
八乙女から直電話だなんて、どういう話なんだ?
もしかして、環くんや壮五くんの事を僕に直接交渉でもしようっていうのか?
だったら当然、答えはNOだ。
保留音が鳴る受話器を取り、ひとつ息を吐いてから外線ボタンを押して応対に出た。
「もしもし?待たせてしまってすまないね···」
八 ー 小鳥遊か?···お前、いったい何を考えている ー
···なんだ?なんか不機嫌な感じだな?
まぁ、八乙女が不機嫌以外なのは僕もあまり見た事はないんだけどね。
「なにをって、どういう事かな?」
平静を装って普段通りに話出せば、それはそれで電話の向こうの八乙女が不機嫌な声色になって行くのを感じ取ることが出来た。
八 ー 自社のタレントをひとり歩きさせ、尚且つ···送迎もなしに仕事をさせるとは、随分と偉くなったんだな、お前は ー
あぁ···なるほど、そういう事か。
きっと八乙女は、局で愛聖さんを見掛けたんだな?
それでひとりでいるのを見て···
「八乙女、心配してくれてありがとう。こっちも少し手違いがあってね···でも大丈夫、すぐに僕が迎えに行くから。これから愛聖さんには連絡入れるから」
八 ー 行動が遅い。既に···もう向かっている ー
「向かっているって、どこに?」
八 ー 佐伯 愛聖 を乗せて車を出した。じきに着く ー
「えっ?!あ、ちょっと八乙女?!もしもし?!もしもーし?!」
受話器の向こうからはもうなにも反応はなく、仕方なしにその手から受話器を置く。
万「社長?どうかしましたか?」
最後の僕の声に驚いて万理くんがドアを開ける。
「八乙女がね···愛聖さんをここに送ってくれてるみたいなんだ」
少しばかりの苦笑を混ぜて言えば、万理くんもその事の重大さに表情を固くした。
「まぁ、紡くんが置いてきぼりにしちゃった事だし?ここは八乙女に感謝しておこうか」
万「···です、ね」
その事を伝える為に万理くんとみんなの所へ戻り、愛聖さんの事を伝えると、八乙女と鉢合わせる前に寮へと帰した。
環くんと壮五くんを、八乙女の目から離す為にも今はこれが最善だと思うし。
さて···そろそろ僕は八乙女の小言を聞く腹を括るとするかな···