第8章 新たな一歩へ
姉「ほら、早く支度しちゃうわよ?アタシもあの3人の面倒見るのに忙しいんだからね?分かってる?」
そう言いながらもどことなく嬉しそうに帯を解いてくれる姉鷺さんから言われるままに、袖を抜いでは着物用のハンガーにそれを掛けて行った。
···までは、良かったんだけど。
下着姿に1枚羽織った状態まで来て、気付いてしまった、私。
いや、正確には気付いていても、気付かないフリをしていた···というのが相応なのかも。
姉鷺さんって···本来は男性···だよね?!
咄嗟に脱ぎかけた最後の1枚を合わせ重ねると、姉鷺さんは私の考えてる事なんてお見通しだと言わんばかりに笑いだした。
姉「今更どうってことないでしょ?だいたい、アンタのスリーサイズまでバッチリ知っちゃってるんだから。ほら、サッサと脱いで着替えなさい?じゃないと、そろそろ来るわよ?」
『く、来るって、誰がですか?!』
姉「不機嫌顔の、アンタのよく知ってる人」
不機嫌な顔をした、私のよく知ってる···っていうのは、つまり···
『八乙女社長が?!なんで?!どうして?!』
だってさっきは忙しいんだ!とか言ってたよね?!
姉「そんなの、アンタを送り届けるからに決まってるでしょ?」
送り···う、うそ?!
姉「実はさっき、アタシがここに来る時にすれ違ったのよね~。荷物を纏めて歩いていくアイドリッシュセブンのメンバーと」
『え?だって姉鷺さん、さっき紡ちゃんの事を···』
姉「知ってて言ったのよ。で、いろいろあって忘れられちゃったみたいよ?愛聖を一緒に連れて帰るってことを」
···マジですか紡ちゃん!
姉「それに、コレ見て?社長から届いたメール。ちゃんと書いてあるでしょ?自分が送るから捕まえとけってね?」
うぅっ···本当だ···
姉「はい、お終い。髪はどうする?簡単で良ければ直すけど?」
『お、お願いします···ハァ···』
さすがに和装に合わせた髪型のままじゃ、違和感あるだろうから···
姉鷺さんに手伝って貰いながら支度が終わった頃、予告通り八乙女社長が現れたのは言うまでもなく。
遠慮もなにもする暇もなく、私はまたも···八乙女社長の後を着いて行くしかなかった。