第8章 新たな一歩へ
下「それではまた次回、この時間、このチャンネルでお会いしましょう!」
最後のアーティストが歌い終わり、そのまま番組のエンディングへと繋いだ下岡さんが挨拶をして一緒にお辞儀をして大きく手を振ってみせる。
インカムにはCMまでのカウントダウンが数えられ、それもようやく切り替え完了の合図へと変わった。
『下岡さん、今回はホントにありがとうございました!いい経験を積ませて頂きました』
下「佐伯ちゃんもお疲れ様!こちらこそ急な事だったのにありがたかったよ~!···今度パンケーキご馳走させてね?」
にこやかに笑いながらも次の約束をしてくれる下岡さんに微笑みを返し、ぜひお願いします!と握手をしてステージから降りた。
楽屋まで送るというスタッフを丁重にお断りして、1人まだざわめきが続く廊下を早足で歩く。
最後の衣装が和装である為、思うように足が前に出ない事も構わず進もうとして、曲がり角で人とぶつかってしまった。
『すみません!お怪我はありませ···』
咄嗟に顔を上げて謝りかけて、その見慣れた眉間の深いシワに言葉を詰まらせる。
『八乙女社長?!』
ぶつかった拍子にへたり込んだ私を見下ろすその不機嫌な顔は、間違うことなく···八乙女社長で。
八「まずは立て、佐伯 愛聖。例え局の通路でも、みっともない姿を晒すんじゃない」
『す、すみません···』
着慣れない物を纏いながら、ヨロヨロと立ち上がる。
八「そう言えば、小鳥遊はどうした」
『社長なら今日はどうしても外せない用事があったので···』
八「小鳥遊の代理人が同行してるのか」
『あ、そうでもなくて···ですね···入りはひとりで···』
モゴモゴと言えば、八乙女社長の不機嫌な顔は更に不機嫌さをまして行った。
八「自社のタレントをひとり歩きさせるとは、小鳥遊も立派になったもんだな」
···ヤバい。
なんかわかんないけど、八乙女社長が怒ってる。
『か、帰りは大丈夫ですよ?アイドリッシュセブンの皆さんと、そのマネージャーの方と一緒に帰るので』
まるで怒られている事を言い訳するように言えば、それはそれで···無言の圧力をかけられる。
八「行くぞ、佐伯 愛聖」
『行くって、どちらへ?』
八「お前の控え室だ」
控え室、って、なぜ?!