第8章 新たな一歩へ
❁❁❁ 百side ❁❁❁
「こちらへお願いします」
生放送でザワつくバックステージで、スタッフに案内される。
いろんな番組に出入りしてるけど、緊張しないってのはなくて、それなりにオレもピリッと緊張感を味わいながら出番を待つ。
MCから紹介されるギリギリまで、担当してくれてるヘアメイクさんのお世話になりながら、横に置かれているモニター越しにマリーを見続けた。
やっぱり心配だよなぁ···
いつも一緒にいる仲間が、あんな風にミスったりしたら。
マリー自身は、一生懸命に笑顔を作って進行のお手伝いをしてるけどさ。
あの笑顔は···言わばお仕事用で。
付き合いの長いオレたちから見れば、その笑顔が営業スマイルだってのは一目瞭然で。
千「モモ···分かってるとは思うけど」
ユキがオレの肩に手を乗せて、同じようにモニターに目を移す。
「···分かってるよ。ちゃんとオレたちの仕事はする。けど、軽快トークで絡むのはオッケーだろ?」
千「···そうね。その辺のトーク回しはモモに任せるよ。僕が話し出したら、きっと愛聖を困らせるだろうからね。例えば···駆け寄って激しくハグ&キスとか」
「ダメ!それは絶対NGだから!」
千「冗談なのに。けど、僕が暴走しないように、先にモモで我慢しとく」
そう言ってユキが、不意にオレを抱きしめるように腕を回した。
「もう~、ダーリンったら···ダ・イ・タ・ン!こんな所でダメだってば。ほら、みんなが見てる」
いつものように構いあって、近くにいるスタッフから笑いが起きるのを感じて体を離す。
「すみません、うちのダーリンってば、実は緊張しいなんですよ~。百ちゃん愛されしいで困っちゃう!」
にぱっと笑って見せて、更に笑いを引き起こしてみせた。
「Re:valeさん、登場口にスタンバイお願いします」
笑いながらもオレたちを案内してくれるスタッフとハイタッチを交わして、あとはMCに呼ばれるだけの状態で登場口にユキと立つ。
千「モモ、まだ客席はTRIGGERの色が強く残ってるけど···行ける?」
「当然!会場全体をオレたちRe:valeのカラーに塗り替えよう!」
千「そうだね。まだまだTRIGGERに道は譲るつもりはないからね」
そう言うユキに笑い返して、名前を呼ばれるのを待った。