第2章 7つの原石
❁❁❁ 八乙女宗助side ❁❁❁
なぜ、小鳥遊に話そうと思ったのかは後悔などしていない。
愛聖にはひどい仕打ちをしたとは自負している。
だが、泥に塗れてまでこの業界に存在させたくはなかった故の、解雇だった。
居場所を見つけて、ほとぼりが覚めた頃···事実を話して迎え入れようと思っていた。
それなのに、小鳥遊が愛聖を連れてここへ来て。
自分のところに在籍させたいと申し出て来て···
他の誰でもない小鳥遊ならば···預けられる。
そう考えた。
私とは違うやり方で、愛聖が進むべき道を切り開いてくれるなら。
この男に託そう···そう腹を括ったからだ。
その為には、この男だけには事実を話しておかなければと思った。
別に言わなくてもいいのだろうが、何かあった時···この男なら、必ず愛聖を守ってくれるだろうと考えたからだ。
「愛聖の母親は、ある日突然別れを切り出してきた。他に好きな男が出来たから、別れたい。未来に希望がない男との関係は、もう終わりにしたい。そう言って姿を消した」
小「もしかしてその時には、もう?」
「恐らく、な。それから一年程経ってから、偶然見掛けて声を掛けた。その時には赤ん坊を抱いてたんだ」
じゃあ···と言いかけて小鳥遊は口を噤んだ。
「まさかと思って問い詰めたら、別れを切り出した時には子供が出来ていた、と。それから今は新しいパートナーと上手くやってる。本当の父親は誰なのか話していないが、子供の事は相手は自分が父親になると言って一緒になったと聞かされた。だから私は···遠くから愛聖の成長を見守っていた。が、そのパートナーも程なくしてこの世を去った」
小「なぜ君は、彼女に自分が本当の父親だと言わなかったんだ?」
「言えるわけないだろう。この私が父親だと言ったら、アイツの中での父親像が変わってしまうからな」
認知だけは、と思ったが···それも母親に拒否された。
「せめて養育費だけはと、毎月同じ日に金を送った。不自由のない生活をさせてやるのは親の務めだと思ったからな。しかし、母親が亡くなった後に知ったが、その金は全て愛聖名義で手付かずに預けられていた」
片親だけでの生活は、苦しかっただろう。
そう思うと···やり切れない気持ちが募った。