第8章 新たな一歩へ
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
大「ミツ、イチが行きそうな場所に心当たりはないのか?」
突然いなくなった一織をみんなで探しても、その姿はどこにもなくて大和さんが三月を振り返る。
三「一織が行きそうな所って言っても···あ···」
ナ「心当たりが?」
三「オレが落ち込んだりした時によく行ってた場所···ゼロアリーナ!一織も連れて行ったことがある!」
行ってみよう!と大和さんが言って、みんなで走り出す。
一織、ゴメン。
オレがあの時、発作を起こしかけたりしなければ一織があんな失敗をする事なんてなかったのに。
みんなで走りながらも、誰より早く息が上がって行く自分の体が悔しい。
壮「陸くん、大丈夫?手を貸そうか?」
「ありがとうございます壮五さん。大丈夫です」
壮「分かった、じゃあ頑張って走ろう。でも、何
なにかあったらすぐに言ってね?」
「はい!」
にこりと微笑む壮五さんに言って、少しだけ遅れ始めてる足に力を入れる。
壮五さんは、いつも優しい。
壮五さんだけじゃない。
大和さんも、三月も、ナギも。
環は口下手だけど、でも環なりにいろいろ心配してくれたりもしてる。
一織だってそうだ。
普段はあんなに嫌味っぽい事をオレに言って来たりするけど、それが一織の普通なんだと思う。
それに、今回の事だって···誰も気付かなかったのに、一織は発作が起きそうだった事を誰より早く気がついてたみたいだし。
だからきっと、そのせいで気が散ってあんな事に···
どんな事でもカンペキにこなして来た一織がミスしちゃったとか、オレのせい以外に考えられない。
三「···いた!一織!!」
前を走ってた三月が一点を見つめ、一織の名前を叫ぶ。
けど一織は三月の···オレ達を見て逃げるように走り出した。
三「バカ!なに逃げてんだよ!」
三月が一織に追いついて、その手を掴む。
一「っ···離してください」
三月の手を振りほどこうとしても、三月は離すまいと
しっかりと掴んだままでいた。
一「わ···私のせいで···あんな事に。あなた達に合わす顔がありません···みんな、あんなに頑張ってたのに···みんなの夢を、私ひとりで台無しにしてしまった。ごめ···なさい···っ、ごめんなさい···」
それが、オレたちが初めて見た···一織の涙だった···