第8章 新たな一歩へ
❁❁❁ 千side ❁❁❁
百「ユキ、いまの見てた?さっきここに挨拶に来てた時は、あんなに元気いっぱいだったのに···どうしたんだろう」
「そうね···」
確かに今のは、ただ単に緊張していて···とか、そういうレベルのものではない。
グループ活動をしているのに歌い出しその物を忘れてしまうなんて、よくある事じゃない。
ましてや彼が最初に歌い出すわけではない。
彼の前に、他のメンバーが歌っているんだから。
百「あっ、またぶつかった」
モニターを指差すモモを見てから視線を移せば、ぎこちなくポジション移動をするメンバーが全面に映っていた。
これはきっと、愛聖は相当ハラハラしてるだろうな。
僕たちはモニターを通して見てるだけだけど、愛聖は現場で、すぐ近くで···見てるんだから。
百「なんだかグダグダなまんま終わっちゃったよ」
「そうね···でも、生放送だから仕方がない」
百「そうだけどさ···もう!ダーリンってばドライ過ぎる!」
「そんな事を言われても、僕にはどうしてあげる事も出来ないし。ただ、出来る事があるとしたら···」
モモを見つめながら、はぐらかすように言葉を途切れさせる。
百「あ、あるとしたら?」
「心配して、憔悴してるだろう愛聖を慰めてあげるって事かな?···ハグとキスで」
フッ···と笑って見せれば、みるみるうちにモモの表情が変わる。
百「ダーリン浮気?!ハグ&キスとか、オレだってしたい!」
「···僕と?」
百「マリーと!!」
···そんなの、モモは僕に内緒で、とっくにしてるくせに。
まぁ、いいか。
このまま僕は知らないフリをしていよう。
「じゃあ、僕が1番最初でモモは僕の次ね?」
百「ダーリンってばズルい!!」
モモとじゃれ合いながらモニターを見れば、愛聖は平然とした “ フリ ” を見せながらアシスタントを続けていた。
まったく···見てられないな。
Re:valeの出番の時、さり気なく···少しだけ慰めておこうかな?
···さり気なくで、済めばいいけど。
なんてね。
さすがに僕だって、全国ネット中にそんな事はしない。
モモが慌てる姿も見るのは楽しいけど、仕事は仕事。
甘い楽しみは、プライベートの時に取っておこう。