第8章 新たな一歩へ
下岡さんが進行していく中で、時々ちゃんと私にも話を振ってくれたり、その為のお手伝いをしながら番組が進行して行く。
アイドリッシュセブンの出番は、台本を見る限りまだまだ少し先だし、今頃はみんなで···頑張るぞー!おーっ!とか円陣組んでたりして。
下「それでは歌って頂きましょう!皆さん、スタンバイお願いしま~す!」
最近活躍中のアイドルグループが移動し始めると、観客席からは黄色い声援が飛び交う。
凄いなぁ···でもきっと、アイドリッシュセブンだってデビューしたら、あっという間に人気者になるだろうから···なんて思い描いて、うっかり表情が緩んでしまう。
危ない危ない···こんなユルユルの顔をカメラに抜かれたりしたら大変!
マイクを下ろし、軽く咳払いをして耳に付けたイヤホンを挿し直すと、ちょうどのタイミングで進行変更の指示が流れる。
···え?
アイドリッシュセブンの出番繰り上げ?!
思わず下岡さんの顔を見れば、下岡さんもにこやかな顔を崩さず、生放送はいろいろあるからね~と小声で私に言って笑う。
確かにそうかも知れないけど、いま歌ってるグループが終わった次がアイドリッシュセブンだとか、どんな事情があったんだろうかと不安な気持ちにもなる。
だけど、私がそんな不安気な顔なんてしてる場合じゃない。
みんなはもっと、慌ただしくしていると思うから。
急な変更で緊張してしまっているかも知れないし。
そんな時、知った顔の私が···普段と変わらない顔をしていたら緊張も和らぐかもだし!
よし!と気持ちを切り替えたところで曲が終わり、ステージでは歌っていたグループが観客席に手を振ったりして場を盛り上げていた。
下「ありがとうございました!それではここでCMです。その後はいよいよ噂のグループが登場します!テレビの前の皆さん?チャンネルはそのままで!」
下岡さんの言葉に被せてアイキャッチが流れ、インカムにはCMに入ったと情報が送られてくる。
下「佐伯ちゃん、いよいよだよ?笑顔の準備はいいかい?」
『はい。あとは皆さんが早くここにたどり着くかの問題で』
ー アイドリッシュセブン到着してます。CM明けたらそのまま進行してください ー
袖にいるスタッフから状況を教えられ、下岡さんと顔を合わせて頷く。
私は、大きく静かに···息を吐いた。