第7章 予期せぬ出来事
Re:valeの2人が突然現れたにも関わらず、周りのスタッフさん達が慌てることもなく自分たちの用事をしているのを見ると、もしかしてこの2人がここに現れるのを先に知っていたんじゃないかとも思えるけど。
『千?今日の打ち合わせって千たちも一緒なの?』
ようやっと解放され、1歩下がって聞けば···急に真剣な顔を見せて千が顔を覗いてきた。
千「打ち合わせは僕たちのスケジュールにはなかったけど、下岡さんからケガの事を聞いたから様子を見に来た···骨折、とか?」
チラリと私の手首に目をやって、また私の顔を見る。
『あぁ···まぁ、ちょっとだけだけど。私が転んだ時に変な手のつき方をしちゃって···でも大丈夫だから』
千「不自由してるなら、僕の、」
『大丈夫!みんな私が困ってると優しく手を貸してくれるから。今日だって、ここへ来る前には髪を編み込んでくれたり、メイクだって』
ここまで言ってしまってから、ハッとする。
髪を編み込んでくれたのは、手先が器用なナギさんや紡ちゃんだけど。
細かい箇所の仕上げメイクを施してくれたのは···万理だ。
千「メイク···ね。髪はともかくとして、ねぇ···メイクは、誰に?」
『えっ?!あ、べ、別にその、えっと、そ、そう!事務員さんだけど!!』
万理という名前は出せないけど、事務員さんって事なら、嘘はついていない。
千「なら···いいけど。もし生活を共にしてる誰かに···とかだったら、今すぐ愛聖を攫う所だったよ」
クスリと千は笑うけど、私は笑えないよ!
「佐伯さん、お話中すみません···そろそろ始めたいんですが···」
スタッフの1人が遠慮がちに私と千を交互に見て、申し訳なさそうに声をかける。
『すみません、いま行きます。で、千達は参加なの?』
千「僕たち?最終打ち合わせに僕たちがいたら、お邪魔じゃない?」
って事は···そもそも参加の予定はないってことなのね?
『分かった···じゃあ···』
千「ん?」
『百ちゃんと気を付けて帰ってね?あ、それから岡崎さんにもよろしく伝えて?はい、お疲れ様でした』
スタッフと楽しそうに話してる百ちゃんを即座に連れ戻し、千の背中をグイッと押して部屋から出しドアを閉める。
まったく···絶対王者、天下のRe:valeは、お騒がせなんだから。