第7章 予期せぬ出来事
ひと呼吸置いてから用意された席につき、もう一度スタッフさん達にすみません···と言ってから腰を下ろした。
下「絶対王者のRe:valeをあんな風に軽くあしらうなんて、佐伯ちゃんにしか出来ないよ?こっちは見てて楽しませて貰ってるし、謝らなくていーの!普段はなかなか見ることが出来ない素顔っぽいのとか、得した気分だからね」
『アハハ···そう言って頂けると···』
なんて言いつつも、心の中では···私は毎回の事なんですけどね···とか、思っちゃったりして。
それに、千を怒らせると怖いし。
普段、大人しい人ほど怒らせると怖い···っていう定義がピッタリハマるタイプだね、千は。
あれ?
って事は···万理もか?
それから···逢坂さんとか、一織さんとか?
···とにかく、大人しい人を怒らせないように気をつけよう。
スタッフさんから説明される事を辿たどしくメモを取りながら、頭の片隅にそんな事を記憶していた。
その後も、ミュージックフェスタの1日の流れを少しずつ確認や追加説明をされながら打ち合わせが進められ、予定時間を少しオーバーしたあたりで打ち合わせは終わった。
下岡さんを最初に、後片付けを始めるスタッフさんたちに挨拶をして回ってから社長と廊下を歩く。
基本的には下岡さんのアシスタントではあるけれど、それでも···振り当てられた仕事は山のようにある。
長時間の生放送ともあれば、何かあった際のフォローも考えておかなきゃいけないし。
今更だけど、私にちゃんと務まるんだろうか···
小「疲れた?」
考え事をしながら無言で歩く私を、社長が覗く。
『いえ···そうじゃなくて、こんな大役をホントに私で良かったんでしょうか?なんて』
小「キミだからこそ、依頼が来たんじゃないかな?って、僕は思うけど?」
どうかな?って言いながら穏やかに笑う社長の意図が、私には分からなかったけど、でも、社長にそう言われると悪い気はしない。
『よし!当日は血反吐流しても頑張ります!私がへこたれてる場合じゃないですよね?だって、デビューを賭けたみんなの気持ちが1番だから』
小さくガッツポーズを作って見せて、窓の外で輝く星を見上げる。
明日も···この輝きが、変わらずみんなに降り注ぎますように。
そう、祈った。