第7章 予期せぬ出来事
社長が自ら運転する車から降りて、2人で最終打ち合わせをする部屋まで来た。
まだ少し時間も早い事もあって、集まっているスタッフも疎らではあるものの、そこに下岡さんを見つけて駆け寄り挨拶を済ませた。
下「どう?ケガの具合は」
『まぁ、こんな感じです···一応、取り外しの効く固定具にはして貰いましたけど、不便な事も多くて』
ケガをした手を軽く掲げて笑えば、ちゃんと治さないと後々で困っちゃうからね?と念を押された。
下「そうだ!まだどうなるかは彼ら次第なんだけど、今日はスペシャルゲストがここに来るかもなんだよ?」
『スペシャルゲスト···?誰ですか??』
下「それはねぇ···あ、ちょうどいい所に!」
下岡さんがそう言った直後、バタバタとした足音が急接近したと思えば···振り向く前に背中にドンッと衝撃が走る。
「マリー~見っけ!!」
『いったたた···って···わっ!!す、すみません下岡さん!!』
衝突されるままに前に押された私の口紅が、下岡さんのオシャレなシャツの胸元に見事なまでにスタンプされていた。
百「おおっ!リアルなキスマーク!」
『百ちゃん!!背後からドーンってのはやめてって前にも言ったよね?!私の鼻が潰れたらどうするの!』
衝撃に耐え切れずに押された鼻を押さえながら怒れば、百ちゃんは頬をポリポリと掻きながらゴメンゴメン···と笑った。
千「背後からドーンがダメなら、前からギューってするのはいいんだよね?」
フワリ···と千の香りがして、腕に閉じ込められる。
千「これなら愛聖の鼻も潰れないし、ドーンでもないから」
『そういうのもダメ!今はお仕事中だから!』
千「プライベートならいいの?···じゃあ、帰ろう?」
『私の話を聞いてー!!社長も笑ってないで助けて下さい!』
ニコニコと笑顔を崩さない社長に助けを求めても、仲良しなのはいい事だね~なんて、呑気に笑っている。
『下岡さん···スペシャルゲストって、もしかして?』
ゲンナリ顔で聞けば、下岡さんもカラカラと笑っていて。
下「もしかしなくても、かな?」
なんて軽い感じで返してきた。
打ち合わせ···無事にスムーズに終わるんだろうか。
未だ解き離してはくれない千の腕を押し広げながら、Re:valeは何しにここへ来たんだろうかとため息を吐いた。