第7章 予期せぬ出来事
❁❁❁ 千side ❁❁❁
モモがおかしな事を言っては、何やらニヤついている。
きっと愛聖のエプロン姿が···とか、そんな想像してるんだろう。
変なモモ。
愛聖のエプロン姿なんて、僕の家ではしょっちゅう見てるハズなのに。
フゥ···と軽くため息をついて、読みかけの···と言うより、ずっと眺めていたページを閉じようと手を伸ばす。
下「このランジェリーのCM、なかなか評判いいみたいだね」
トントンっと指先で僕が見ていたページを指して、下岡さんがちょっと見せて?と雑誌ごと自分の方に向ける。
下「小鳥遊プロダクションに移ったって聞いた時は驚いたけど、ちゃんといい仕事してるって事は大事にされてるんだね」
大事?
こんな下着姿で素肌を晒しているのに、大事にされてる?
いや、仕事の内容がどうとかじゃなくて、絡むメンバーに問題が···そう思うと、自然に眉を寄せてしまう。
下「おやおや?千くんは何だか、そうは思ってないのかな?」
パッと笑顔を僕に向けた下岡さんが、そこんとこどうなのよ?とさらに顔を近付けてくる。
「僕は別に。ただ···」
下「ただ?」
「僕ならもっと、愛聖の取っておきの表情を引き出せるのに、なんて」
とか、言っては見たものの···普段の顔じゃ仕事用にはならないか。
下「言うねぇ!じゃあ、ミューフェス本番では会話のやり取りを聞き逃さないようにしないとだね」
「誰の?」
下「もちろん、キミと佐伯ちゃんのだよ」
百「えっ?!ユキと···」
「愛聖?」
下「実はアシスタントのドタキャンがあってね。スタッフが急いで誰か代役をって話になってたから佐伯ちゃんを推薦したんだよ。で、小鳥遊さんとこに電話もしたし、本人とも話して···オッケー貰っちゃったんだ」
下岡さんの話を聞いて、そう言えば···と思い出す。
この前、仕事の合間にちょっと時間が出来たから愛聖にお茶でもどう?って電話したら、急な仕事の都合で社長と衣装合わせをしてるんだとか言ってたな。
それは、今度のミューフェスの為のって事だったのか。
···早く言ってくれたら、僕も衣装合わせとやらに駆け付けたのに。
その時のことを思い出して、いつも小鳥遊社長と一緒だって言うことに少しだけモヤッとする。