第7章 予期せぬ出来事
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
ミュージックフェスタの為に社長から提示された曲をみんなで練習する。
今までとはテンポの違う曲に、それぞれが自分の担当する箇所を念入りに頭に入れる。
ナ「つられそうでも耳塞げまセーン!」
陸「ゆっくりの曲だし、勢いでってワケにも行かないよな···」
ナギくんや陸くんの言ってることは僕も分かる。
確かにこの曲は···少し難しいかも知れない。
大「そういやタマとソウの声はハモるとキレイだよな?」
環「おー···そーちゃんと合うところ1個発見···」
「アハハ···それでよく僕と2人で移籍しようなんて言ってたね···」
あの一件以来、環くんは少し···変わった気がする。
きっとそれも、妹さんの事をずっとひとりで抱えてたのが解かれて、心の荷が和らいだ事もあるんだろう。
愛聖さんのケガに関しても、環くんは出来る範囲で一生懸命なにかと手助けしてあげてるみたいだし。
愛聖さんは···少し困った顔をする時もあるけど。
それでも環くんの気持ちだからと、髪を乾かして貰ったり、食事の配膳の手伝いとか、そういったお手伝いを受け入れたりもしてる。
環くんは口ベタで上手く言葉で表現出来ない時もあるけど、根本的な所は素直でいい子だと思うし。
僕みたいに、感情を押さえてしまうような事もないから。
『皆さん、お疲れ様です!ささやかながら私から差し入れをお持ちしました!』
元気な声と共にレッスン場のドアが開けられて、声と同じくらい元気な姿で愛聖さんが入って来た。
大「差し入れとか、愛聖のクセになかなか気が利くじゃん?」
『あーっ、そういう事をいう二階堂さんにはあげませんよ?お腹も空くだろうと思ってドーナツも買って来たのに』
環「ドーナツ!やった!···マリー、俺も配るの手伝う!」
『じゃあ、お願いします。ひとり2個ずつありますから、飲み物と一緒に配って下さいね?あ、そうそう、二階堂さんはいらないらしいから』
大「ちょい待ち!いらないとは言ってないっつーの!」
クスクスと笑いながら愛聖さんが言って、大和さんが即座にツッコミを入れる。
なにかと···仲良しなんだよな、愛聖さんと大和さん。
そんな2人のやり取りを聞かながら、環くんが配るドーナツを受け取った。