第7章 予期せぬ出来事
万理のバレバレのイタズラで笑ったあと、そのまま事務所で甘くてミルクたっぷりのコーヒーを飲みながら歓談する。
『···でね、そういう訳でタクシー使わなかったから交通費の精算はいらない』
万「そういう訳って、どんなだよ···それじゃ経理担当の人が困るだろって。だいたいなんで公共機関を使うんだ?社長はタクシー使うように言ってるだろ?危ないからって」
だって···局からここまでタクシー代高いんだもん。
それに比べたら電車なら時間通りだし?
···とは言えない。
だってお仕事モードの万理って、凄いキッチリしてるから。
万「精算はどうしたらいいんだ?路線で調べて計算出すしかないけど、それで大丈夫なのか聞いてからだな···」
『だから、今回は大丈夫だって。次からはちゃんと車呼ぶし、ね?』
万「だから、そうじゃなくて」
『あ!じゃあ、こうしよう?今回は万理が体で払うってのはどう?!』
万「はぁっ?!俺が?!」
突拍子もない私の思い付きに、万理が狼狽える。
『あ、体でって···そういう意味じゃなくてね?えっと···ハ、ハグとかキスとか!』
万「ホストか俺は!」
絶対言うと思ったけどね、そのセリフ。
これがもし、千や百ちゃんなら間髪入れずに即行動だから、そんな交換条件は出せないけど。
万理だから、きっと···
万「ハァ···しょうがないなぁ、今回だけだからな」
そうそう、今回だけだからって···えっ?!
『今回だけってなに?!っていうより、えっ?!』
自分が冗談半分で出した条件に乗ってくる万理に、私が慌ててしまう。
万「そんな驚かなくても、愛聖が言い出したんだろ?俺の体で払えって」
『それは···そうだけど。じゃなくて!そ、そもそも···そんな交通費の幾らか位で、かっ、体を売るのはやめなさい!もっと高値の時まで大事にしないと、ね?ね?!』
ほらほら、と距離を詰めてくる万理にイスごとスルスル下がりながら逃げる。
万「あのなぁ、俺も腹を括ってるんだから愛聖も腹を括れって」
万理がニコニコと笑顔を見せるけど、その笑顔が怖いよ万理!!
下がり続けるにも限界が来て、万理の手が私の頬を撫でる。
『あ、あの···マジですか??』
万「大マジ。じゃ、行くよ?」
少しずつ近付く万理の顔に、ギュッと目を閉じる。