第2章 7つの原石
『そうでした』
クスッと笑う顔が年相応で、 仕事の時の顔とは違って可愛らしく感じる。
この子はアタシを、初対面の時からすんなり受け入れてくれた貴重な子だから、尚更···守ってあげたくなるのよね。
大概の人はアタシと初めて会うと、一瞬躊躇うから。
あ、そこんとこ社長も違和感なく普通にしてたけど。
抱き締めたままの愛聖を解放して、お茶入れるからとソファーへと誘う。
「そう言えば愛聖。本当に小鳥遊プロダクションに入るの?」
甘い香りのフレーバーティーを出しながら、さっきの話を思い出して聞いてみる。
『う···ん。でも、いろいろと事情があって、タレント研究生からスタートする事になった』
「研究生?!···アンタみたいにキャリアがある子が、研究生ですって?!」
あンの社長!
仏のような顔して、なんて鬼のような扱いをするのかしら!
『キャリアとか、そういうのは関係ないよ?今の私にはちょうどいいかなって思うし。だけど』
カップから立ち昇る香りを堪能しながら、愛聖は何かを考えるように言葉を止めた。
「だけど?」
『うん···もし、またこの世界でちゃんとお仕事出来るようになったら、その時は···八乙女プロダクションに負けないから』
「あら、随分と強気な発言ね?」
『負けないよ?ここで八乙女社長直々に教えて頂いた事が間違ってなかったって証明にもなるし。それに、楽も龍も天も頑張ってるの知ってるから』
それって、TRIGGERに対しての宣戦布告かしら?と思ったけど、きっとそういう事じゃないんだわ···と自己完結した。
『私は、みんなみたいに歌は上手くないし対等になるなんて出来ないけど。だけど、いつかきっと···前よりたくさんお仕事出来るように、頑張りたい』
一度は途切れてしまったけど、それが子供の頃からの夢だったから···
最後にそう付け足して、愛聖はまたカップに口を付けた。
「頑張りなさいなんて言ったら社長に怒鳴られそうだけど、でも、何かあったら私にはいつでも連絡寄越しなさい。お姉さんが喝を入れてあげるから」
『お姉さん?』
「なによ、不満?ま、ご希望であれば···ンンッ、お兄さんにもなれるけど?」
声質を落として薄く笑いながら頬を撫でると、お姉さんでお願いしますと笑い返された。