第2章 7つの原石
❁❁❁ 姉鷺カオルside ❁❁❁
ちょっと···ビックリしちゃったわ。
小鳥遊プロダクションから社長と話がしたいってアポがあったから、何かとは思っていたけど。
まさかその小鳥遊社長が、愛聖を連れて来るなんて!
あの日、社長が急に愛聖をクビにして追い出した時。
力及ばずとも、アタシだって急すぎるって社長に掛け合った。
···ま、聞いてはくれなかったけど。
その後から愛聖の行方が一切分からなくなって。
私も仕事の合間に探したけど、見つからなかった。
なのに今、その愛聖が···ここにいる。
しかも、ウチの社長が愛聖をいらないって言うなら、小鳥遊プロダクションで面倒見たいという申し出付きで。
こんな事を言ったら社長に怒鳴られそうだけど、それを聞いてちょっと安心したわ。
「待て···お前に話がある。姉鷺、人払いを。あぁ、お前もいなくていい。その小娘を連れて他に行け」
「分かりました。それでは庶務室にいますので、ご要件がお済みになりましたらお声掛けを」
そう返して、愛聖の背中に手を当てながら社長室を出てアタシの庶務室へと連れて行く。
「ここよ···って言っても、アンタは知ってるわよね」
『はい、まぁ』
鍵を開けドアを開き、先に愛聖を部屋に入れてから私も体を滑り込ませてドアを閉めた。
『···前と変わらない、いい香りのお部屋ですね』
そう言いながら微笑みを見せてアタシを振り返る愛聖を、衝動的に抱き締めた。
『あ、姉鷺さん?!』
「愛聖、アンタ···少し痩せたんじゃない?ご飯ちゃんと食べてるの?」
元々線が細い愛聖の体は、あの日···社長に掛け合ってくるから待ってなさい、と抱き締めた時より痩せたような気がして胸が痛む。
「心配、してたんだからね。何度電話しても出ないし今までどこにいたのよ」
『それは、えっと』
「偏食と睡眠不足は美容の大敵!って、いつも言ってたでしょ?アンタ好き嫌いはないけど、なんせ食べる量が少な過ぎるからバランス取れた食事摂らないと」
ちょっと目を離すと、食べる事が面倒だからと平気で食事抜いたりするんだから。
『姉鷺さん、お母さんみたい』
「ちょっと愛聖、そこはお姉さんでしょ!」