第7章 予期せぬ出来事
寮の前まで万理に送って貰い、事務所に戻る万理を見送ってから寮の玄関を開ける。
『ただい···わっ、びっくりした』
ドアを開けると、そこには壁に寄りかかって立つ四葉さんがいて、私を見るなり悲しそうな顔をして壁から背を離した。
環「マリー。えっと···ゴメン!俺なんでもするから、だからホントにゴメン!」
『あ、あの、四葉さん?』
環「そのケガ、俺のせいだってヤマさんといおりんにスッゲー怒られた···だから、ゴメン···」
あぁ、なるほど···
『あのね、四葉さん。これは私の不注意でケガしたんです。だから、四葉さんがそんなに必死に謝ることでもないんですよ』
環「けどヤマさんがマリーがケガした責任取って、治るまではマリーのお世話しろって」
『え?!お世話?!』
別に利き手をケガしたとは言っても、食事や筆記、それから多少の身の回りに少し不自由な位で、誰かのお世話になるほどのことでもないんだけど。
環「ヤマさんがマリーが風呂入る時とか、あとなんか着替えとかいろいろ大変だから手伝えって」
んん?
お風呂に、着替え??
···二階堂さんはまた四葉さんにおかしな事を吹き込んでる!!
この前の楽との食事の時もそうだけど、どうして二階堂さんはイタズラ紛いな事を四葉さんに吹き込むんだろう。
『とにかく、大丈夫だから気にしなくていいですよ?』
みんなの所に行きましょう?とひと声掛けて、無意識に利き手で荷物を掴んでしまう。
『···痛っ』
持ち上げかけた荷物が床に落ち、痛みが走る手首を押さえる。
環「やっぱ痛いんじゃん!貸して、俺が運ぶから。あとマリーは俺に捕まれ」
『捕まれって、あ、ちょっと四葉さん?!』
フワリとした浮遊感の後、目線がいつもより高くなる。
『ちょっ、お、降ろして下さい!』
環「ムリ。マリーごと向こうまで運ぶ。怖いならちゃんと俺に捕まってて。じゃないと、落とすかもだし」
いや、落とすかもって!
そうなったらイヤだと思い、四葉さんの首に腕を絡めてしっかりと捕まってみる。
環「ん、それでいい」
歩き出す四葉さんの体温を感じながら、ふと思う。
今更だけど、ケガしてるの···手、だけど?
だけど、ちょっと機嫌よく運んでくれてるから···まぁ、いっか?
···高くて怖いけど!!