第7章 予期せぬ出来事
『私とですか?』
小「近くにいるって言ったら、ぜひキミと代わって欲しいって」
社長から受話器を受け取り、ひとつ深呼吸をしてから保留ボタンを解除する。
『お電話代わりました、佐伯です···』
下 ー やぁ、久し振りに声を聞いた。最近どう?元気してた? ー
『あ、えっと···ご無沙汰してお、』
下 ー そういう硬っ苦しいのはいらないって前にも言ったでしょ?忘れちゃったのかい?思い出してよ~、ジャジャーン!では問題です。オジサンと佐伯ちゃんは··· ー
『な、仲良しパンケーキ仲間!』
下岡さんのノリに乗せられて、つい思いっきり答えてしまう。
下 ー ピンポーン!正解!···元気そうだね、佐伯ちゃん?突然メディアに出なくなったと思ったら、あの移籍会見でしょ?!ビックリしたよ、ホント! ー
そうだ···私は八乙女プロダクションを解雇になってから、誰にも連絡はしてなかったから。
『いろいろお世話になってたのに、ごめんなさい下岡さん···でも、私はいまとても元気に楽しくしてます』
下 ー まぁ、鬼の八乙女から···仏の小鳥遊に移ったからかな?なんて、これはオフレコね?じゃないと八乙女社長の眉間のシワに挟まれそうだからね~ ー
眉間のシワに挟まれる?···何気なくそれを想像してしまい、思わず吹き出す。
八乙女社長、そんなに言われてしまうほど怖い顔して歩いてたのだろうか。
私と一緒にいる時は、まぁ···怖い顔もなくはなかったけど、それでも···穏やかに笑っている日も多かったけど。
『私も下岡さんの声を聞けて良かったです。いつかまたご一緒出来る日があったら、パンケーキ···誘って下さい』
その時は私がご馳走しますから、と言って笑う。
下 ー ご一緒、か。それなんだけどさ、すぐご一緒出来ると思うよ? ー
『どういう事です?』
下 ー 佐伯ちゃんも知ってるでしょ?ミュージックフェスタ!それのメインMCは僕だけど、実はアシスタントに予定してた女の子が急にキャンセルになってね。多分明日辺りに情報が流れると思うけど、ちょっとオイタが過ぎて暫く雲隠れするみたいでさ? ー
オイタに雲隠れって、その人はいったいどんな事をしでかしたんだろうかと思案を巡らせる。
もしかして最近話題になってる、アレとか?