第2章 7つの原石
❁❁❁ 八乙女宗助side ❁❁❁
数日前、小鳥遊の所からアポがあった。
いったい何の用だと言うんだ。
···まぁいい。
来たらすぐに追い返してやろう。
「姉鷺、塩を用意しておけ」
姉「塩、ですか?」
「他に何がある。小鳥遊が来たら撒いてやれ」
フンッと鼻で笑い、スーツの襟を正す。
···そろそろ、か。
そう思った時ドアがノックされ、案内された小鳥遊が顔を覗かせた。
小「やぁ、今日は時間を作ってくれてありがとう」
昔と変わらず飄々とした態度で小鳥遊が入って来る。
「生憎こっちは忙しいんだ。用件を済ませて早く帰れ」
小「そうだね、君はいつでも忙しそうだ。僕とは大違い」
肩を竦めて笑顔を見せる小鳥遊に苛立ちを覚えながらも、早く中へ入れと促した。
小「八乙女。実は、君に会わせたい人を連れて来たんだ···入りなさい」
小鳥遊がドアの外に声を掛けると、小さく人影が動いた。
『あの、ご無沙汰しております···八乙女社長』
なっ···?!
姉「愛聖?!」
「なぜお前がここにいる!お前はもうここには用がないはずだ!」
思わず声を荒らげると、小鳥遊がその前に立ち言葉から守る。
小「実は数日前に、とある場所で偶然佐伯さんと会ってね。いろいろ話を聞いたら八乙女プロダクションを辞めたって言うし、驚いたよ」
「それがどうかしたか。ウチに必要ないからクビにしたまでだ」
小鳥遊を通り越して愛聖を見れば、俯いて瞬きを繰り返している。
小「本当に、必要ないと思っての事かな?」
「何が言いたい」
小「八乙女が本当にいらないって言うのなら、僕が彼女を引き受けてもいいよね?って」
「戯れ言を。お前はそんなくだらん話をする為にここへノコノコ来たのか?···まぁいい。そんな小娘ひとり、お前が欲しいと言うならくれてやる。そもそもウチには関係ない事だ」
小「そっか、それなら良かった。一応、君には話をしなきゃいけないなって思ったからね···元、社長としての君に」
普段のにこやかな顔とは違い、小鳥遊が真摯な顔を向けてくる。
こいつがこんな顔を見せる時は、いつだって本気で考えている時だ。
小「じゃ、話は纏まったね。お邪魔したよ」
「待て···お前に話がある。姉鷺、人払いを。あぁ、お前もいなくていい」